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第7話「バー」

久々に夜道を歩くと、街路樹の落ち葉が冷たい風に舞い上がり、虫の鳴き声も静かになっていた。 長谷川と2人、近所のバーに来ていた。 「その後、あの少年とはどうですか。」 長谷川には、七瀬の服を相談する時に、専属メイドになってもらった事を話していた。何と答えて良いか分からず、苦笑いで(にご)した。 「彼はただのドールだよ。」 「いつだってドールが1番だろう。」 長谷川が胸ポケットから電子タバコを取り出し口にくわえた。柑橘系の甘く爽やかな香りが漂う。 元へヴィースモーカーの長谷川が、タバコを止められているのは電子タバコのお陰だ。 話の続きを待つ様に、じっくりと電子タバコの香りを味わっている。 その気配に気付いて、ウィスキーの水割りをゴクリと喉に流し込んだ。酒の勢いに任せる様に、七瀬との出来事を詳細に打ち明けた。 「…ゲイなのかな?」 あの一件から、自分が特殊な性癖ではないかとの懸念が生じた。女性の肉体には何も感じないのに、この前の七瀬にはたまらなく欲情した。 「七瀬くんをもっと自分のものにしたい。」 頭を抱えて悩んでいると、長谷川がくすくすと笑いだした。 「別に良いんじゃない?同意があれば、男女間と違って子供が出来る訳でもないし。」 「そんな事はしない!!」 肉体関係はもたないと長谷川に断言した。七瀬は特別だ。自分の部屋に閉じ込めてでも大切にしたい存在だ。自分なんかが汚して良い訳が無い。 「しっかり繋ぎ止めておかないと、他の誰かにとられちゃうかもよ?」 不敵な笑みを浮かべる長谷川がいた。まさかと思い睨み付ける。 「冗談だよ。いつから、そんな猫可愛がりするようになったんだい。」 そう言われると、いつからだろう。 七瀬とはじめて会った時の事を思い出した。

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