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第9話「愛とは」

「これから店に行っても良いですか?」 その日のうちに長谷川に電話をした。他の楽しみを模索した結果、着せ替え用に七瀬の服を求める事にした。 やはり王道の燕尾服か。悩んでいると、全ての事情を知った長谷川から提案があった。 「メイド服にしたら?」 出来るものならそうしたいが、さすがにメイド服は拒まれそうだ。一応、男性でも似合いそうなものをいくつか見せてもらう。 「今度、連れておいでよ。悪い様にはしないから。」 その言葉に気持ちが華やいだ。今度と言わず、次に会う時に連れてくると約束をした。 服を買いに行くとだけ伝え、七瀬を店に連れてきた。嘘はついていないが、妙な罪悪感があった。 更衣室から出てきた七瀬は、見違える様に美しくなっていた。やはり長谷川に任せて正解だと思った。さらに、七瀬の目を盗んで耳元でこっそりと囁かれた。 「素敵なドール君だね。スカート姿はまるで女の子だよ。彼の為にも、あの姿の方が良いかもしれない。」 最初は何を言っているか分からなかったが、後から言葉の意味がジワジワやってきた。 長谷川には何かお礼がしたかったが、出来る事と言えば服を買うことくらいだった。さらに七瀬用のドレスを買い足し、店の売り上げに貢献した。 そしてあの出来事が起きた。 「彼の事、愛しているのかい?」 言われて驚いた。まさか自分が人を好きになることがあるのだろうか。生き物が苦手で、女性が苦手で、ドールを愛する事が人生の全てだと思っていた。 その質問には答えられないまま、夜も更け長谷川はタクシーで帰って行った。

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