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第6話

 凪沙は昨日電話で何か言っていたか?あの女の子の話は聞き流していたから覚えていない。一緒にどこかへ行ったのか。  凪沙の部屋の窓を見るとカーテンが揺れた。帰ってきた?まさか彼女と二人で部屋にいるのか。  気が付いた時には隣の玄関のドアノブに手をかけていた。小学校の時以来、 数え切れないほど開いてきたそのドアはいつものように静かに開く。  二人きり部屋で何をしている?壊れそうな心臓を鎮めるために、ぎゅっとシャツを握りしめた。 凪沙の部屋のドアと開けると、きょとんとした顔の凪沙が一人でそこにいた。  「どうしたの?」  もっともな質問。  「いや、カーテンが、泥棒かと……」  苦しい言い訳。  「ちょうどメールしようとしてたんだ。昨日、見たいねって言ってたDVD借りてきたよ」  一気に力が抜けてその場に座る俺を残して、何か飲むものを取ってくると凪沙は部屋を出た。ふと見ると机の上には隠し撮りしたらしい写真がある。見たくなくて写真立てを伏せて倒した。  凪沙の話は彼女のことが多い。楽しそうな様子に心は萎えていく。凍った心に針が落ちる。それでも凪沙といたくて、ただ苦痛な話題が過ぎるのを待った。  そして一週間後の日曜日。凪沙は浅野さんに誘われて出かけていった。  俺はしなくてもいい想像に勝手に傷ついている。何もする気が起きない。それでも腹は減る。何か食べようとベッドが起き上がった時、部屋のドアが勢い良く開いた。  そこには泣きそうな顔をした凪沙がいた。  「 先輩の事が好きで、告白したいから手伝ってくれって」  今日は恋愛の相談だったと凪沙は泣きそうな顔をして座り込んだ。  そんなに好きだったのか、苛立ちがつのる。小さくなって座り込む渚を見て、感情のコントロールができなくなった。気が付くと俺は座り込んでいる凪沙を上から包み込むように抱きしめ、その首筋にそっと口付けていた。  凪沙は俺の腕の中で、驚いて目を白黒させている。動くことさえできずに体がこわばっている。慌てて手を解く。一歩下がるとわけのわからない言い訳をした。  「いや、俺たち親友だし……」  凪沙はしどろもどろの俺に微笑むと「元気づけてくれたんだよね、ありがとう」そう小さい声で言った。  俺は何をしているんだ?親友。そう親友と決心したはず。けれど抱きしめた感覚が身体中に残ってその夜はなかなか寝付けなかった。  そしてその夜、俺は夢の中で抱きしめた凪沙をそのまま押し倒していた。

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