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第7話
中学三年生になり進路を考える時期が来た。祖母との二人暮しという状況を考えても公立高校以外の選択肢は俺にはい。
そう、ない……はずだった。
「お前、特待生受けてみないか?」
先生の一言が俺の進路を決定した……凪沙と同じ高校に通える。
人間なんて不純な動機がある方が必死になれる。落ちる気はしなかった。人生であれだけ必死に勉強した事は後にも先にもない。
ただ楽しかった。その先に待っているだろう日々が支えてくれた。片想い歴五年目の春は未来に向かう助走にしか思えなかった。
晴れて俺は凪沙と同じ制服を着る事になった。高校のクラスは偏差値の高い方から順に並んでいる。俺は凪沙と同じ特進A組。クラスも一緒、部活も一緒。
恋人同士なら嬉しい状況だが、何しろ重症な片想い。小学生の時の淡い恋心とは違う熱をはらんだ気持ちに、時折自分の感情のコントロールが効かなくなる時がある。
部活中にもついベンチの方を見てしまう。バスケは向いてないと、早々に諦めた凪沙は高校に上がると同時にマネージャーになっていた。
甲斐甲斐しく働く姿を見て、やっぱり可愛いと表情が緩んでしまう。浅野さんとやらは高校では音楽部に入ったらしい。凪沙の周りから女の影が消えるのは嬉しい。
俺はと言えば、いつもマネージャーの方を見る癖がついてしまっていた。いつも自分たちの方を見つめている俺の視線を多感な高校生が感じないはずはなかった。マネージャーの誰か一人に俺が恋していると噂になっていた。
「ねえ、やっぱり美咲ちゃん?それとも夏帆ちゃん?」
楽しそうに聞いてくる凪沙。ここ世の中で「お前だこら」と、答える。実際には言えるはずもなく、苦笑いしてみる。
「やっぱり修斗は凄いな。女子がみんな修斗の事見ているよ」そう凪沙に言われ、お前はどう思うと聞きたくなる。
凪沙のそばにいたい。それだけだったはず。それなのに今はそばにいることが辛くて仕方ない。やり場のない気持ちを他にぶつける。もう誰でもいい。この隙間を埋めてくれるのなら。
凪沙と玄関で別れ部屋に入ったタイミングで着信があった。どっかで拾った女と会う約束をする。会う目的なんて一つしかない。
市内の高校に通う可奈。凪沙に気づかれないように注意して会っていた。俺が誰かと付き合っていると知っても凪沙が何か感じることはないだろう。それは分かっている。それでもなぜが、後ろめたかった。自分の気持ちがどこにあるのか、自分が一番知っているから。
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