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第10話
合宿の部屋割りは、凪沙と俺、そして二組の山本。近藤でなくてよかった、あいつの距離感はどうも落ち着かない。
夏合宿は部員も大変だが五十人もいる部員の 食事の世話から 洗濯、ドリンクボトルの準備まで走り回るマネージャーの大変さも半端ない。
文武両道を掲げた校風のため部活に入れる力も相当なもの。くたくたになるまで身体を痛めつけて、部屋に戻る。
部屋に戻ったら電気もついていない、暗い部屋を誰もいないのかと見渡す。隅に寄せたテーブルにもたれて凪沙がスヤスヤと寝てる。同室の山本はどこにもいない。
山本は風呂か?
それにしても凪沙は気持ちよさそうに寝てる。頬をつついてみたが、反応はない。熟睡してるなと見つめていると、どうしようもない衝動が襲ってくる。
駄目だと頭では分かっている。でも心は頭と別のところにある。
眠っている凪沙にじりじりと引き寄せられていく。
そっと髪に顔を寄せるとかすかに甘い香りがする。汗をかいているはずなのに何故か甘い。軽く耳に触れてみる。ぴくっと凪沙が動いたが起きる気配はない。
このまま口付けてもきっと気がつかない。そう思うと心臓の鼓動が速くなる。
顔を覗き込むようにして、凪沙に近づいた時にがたっと不躾な音がした。慌てて凪沙から離れると、近藤が風呂から帰ってきたところだった。
「わりー、風呂先に行ってきた。お前達も行ってくれは?佐伯寝てんの?」
山本は寝ている凪沙の頬をツンと突く。
「なあ、こいつ女みたいな顔してねえ?」
そう言って笑った、その行為に声に苛立つ。
起きない凪沙にも腹が立つ。
「凪沙、風呂行くぞ」
力任せに凪沙の身体を引くと、頭を音を立ててテーブルにぶつけ、驚いて目を覚ました凪沙が「ひゃあ」と、変な声をあげた。
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