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第13話

 合宿最終日。  朝から雨で嫌な天気。湿度が上がって体育館の中は蒸し風呂のよう。  これは体力もってかれるな。大丈夫かと、考えていた時どすんと鈍い音がした。振り返ると、凪沙が倒れていた。  倒れた凪沙を見た瞬間に反射的に体か動いていた。  凪沙の体を抱き起こす、熱い。熱中症か?  監督が何か叫んでいるのは聞こえたが、その声を尻目に抱き抱えて部屋に連れて戻る。  部屋の空調を入れて凪沙を寝かせた。  意識はある。  衣服を緩めて、口に水を含ませる。  細いな、横になった凪沙は今にも折れそうだ。  後から心配して追いかけてきた来た女子マネージャーたちにもう大丈夫だからと伝えた。  「荻野君、私がついているから戻っていいよ」  笠間に言われ渋々と練習に戻った。昼食の前に部屋に様子を見に戻ると凪沙についてたはずの笠間はいない。  凪沙は気持ち良さそうに、すやすやと眠っている。  頬を軽く指先でつついてみたが起きる様子はない。  「頑張り過ぎなんだよお前」  寝顔を見ていたはずだった。  そう、ただ見ていたはずが・・・寝顔に引き寄せららる。そして、気がついたら凪沙のその唇に触れてしまっていた。  「ええっ?」  驚いた声が後ろでした。  濡れたタオルを手に持って戻って来た笠間が目を丸くして立っていた。 そりゃそうだ。眠っている凪沙に覆い被さるようにして口付ける俺を見たのだから。  笠間との間に変な沈黙が流れた。先にその沈黙を破ったのは笠間だった。  「荻野君、いつも私の事を見てると思っていたのに。見てたのは一緒にいた佐伯君だったの……」  理解出来ないと言う表情で俺を見ながら続ける。  「まさか……佐伯君と、その付き合ってるの?」  「凪沙は何も知らない。そしてこの先言うつもりもない。だから笠間も何も見なかったって事には……ならないかな?」  「佐伯君にも誰にも、内緒にしててあげてもいいよ。その代わり、……その代わりに私と付き合ってくれる?」  冗談でない事はその目からもわかった。俺の夏合宿は最悪な幕切れになったようだ。

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