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第14話
合宿は何事もなかったように終わった。今日から3日間は部活は休みだ。笠間の一方的な告白は俺の返事を聞くこともなく、あれ以来連絡もない。
そして今、俺と凪沙は夏の課題に追われてて、どちらかの部屋で課題を片付けるという単純作業に追われてる。
さっきから凪沙は俺の部屋でテーブルに突っ伏して眠ってしまっている。
こいつは本当によく寝ると感心してしまう。
薄茶色の髪が顔にかかっていて可愛い。自然と手はその髪をなぞる。
寝ぼけた目をして凪沙が顔を上げる。
その顔反則だろう。見上げる目が少し眠たそうで、ふっと笑顔になる瞬間。俺の一番好きな顔だ。気がついたら俺はまた凪沙の唇を覆っていた。
凪沙は何が起こったのか解らないらしく、何度も目を瞬かせる。
「あ、あ。え?な、なに?」
完全なパニック状態。
これは、冗談だよでは済まされないな。
凪沙は慌てて立ち上がると、そのまま課題のノートを俺の部屋に残して部屋を飛び出すように帰ってしまった。
もう最近自分の気持ちに歯止めが効かなくなってる。
三日の休みが終わってまた部活が始まる。
……あの事件以来凪沙は連絡をよこさない。俺からも連絡し辛くそのままになっている。
もう自分の気持ちを隠すのも限界かなと、思う。部活に向かう足取りも重い。
凪沙は今朝早く出たわよとおばさんに言われた。まあ、そうだよな。会いたくないのはよくわかる。忘れ物のノートを預けると学校へと歩いた。
朝から嫌な気分で体育館に入ると一斉にみんなの目がこちらを向いた。
近藤はだけはいつものにやけた顔をして、「へえ」と、言った。
その輪の中心にいたのは……笠間だ。
「私、ちゃんと荻原君に告白したから」
絶対に譲らない強い目をして真っ直ぐにこっちを見てる。そうだった、合宿でのことは忘れていた、あの時代わりに付き合ってと言われたんだった。
その場にいた凪沙が大きく目を見開いて、笠間と俺を交互に見つめた。そして、今にも泣き出しそうな顔をして凪沙が体育館から飛び出して行った。
凪沙?
ああ、そうだった。いつも笠間と一緒に仕事してたように見えたのはあれは偶然じゃなかったんだ。凪沙の想い人は笠間だったのかと思う。
俺は凪沙のそばに居たくて友達という立場を選んだはずだった。それなのに、最悪の事態。どうする事もできず、俺はその場所で動けなくなってしまった。
なぜこんな事になったんだろう。動けずにいる俺を横目に、舌打ちをして近藤が凪沙を追いかけていった。
その日、そのまま凪沙も近藤も部活には戻ってこなかった。
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