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第15話

 翌朝、早く家を出て凪沙を待つ。俺の顔を見て一瞬驚いたような顔をしたが、何事もなかったようにいつもの笑顔になった。  駅へと歩きながら聞きたかったことを切り出した。  「お前、笠間の事どうおもってるんだ?」  「笠間さん? いい人だよ。真面目で一所懸命。でも修斗には彼女がいたよね」  質問の意図が分かってない。俺が聞きたいのはそこじゃない。それに可奈は彼女じゃなくてセフレだった。  「お前さ、笠間の事好きなのか?正直に言えよ、俺には嘘つくなよ」  凪沙は何を聞かれているんだと言う顔をしている。  「どこをどうしたら僕が 、笠間さんの事好きって事になるの?」  「でも昨日」  俺が言いかけると少し凪沙の表情が雲る。  「絶対にない。それだけは誓って言える。昨日は……昨日は、具合が悪かっただけだから」  最後の方は棒読みだったけれど絶対にないと、言ったあのセリフは嘘じゃない。それくらいは分かる。  駅に近づくとこっちを見て手を振っている奴がいた。近藤?何故ここに?一番会いたくない奴が俺たちの事を待っていた。  「おはよう、荻野。よっ、凪沙」  今、凪沙って言ったか?いつから佐伯って呼ぶのやめたんだよ。  「あ、近藤君。おはよう」  そして凪沙が嬉しそうなのは何故だ。三人並んで歩く。凪沙と近藤が楽しそうに話すのを聞きながら俺の苛立ちは、俺の心に爪を立てて傷をつけていった。  お前らいつからか親友なのかよと、聞きたい。  聞けない代わりにため息が出る。  今日は午前練、午後からは休みだ。練習の後、帰り支度していると 凪沙がやってきた。  「僕、近藤君と本屋に行くからまた明日ね修斗」  「本屋?じゃあ俺も」  言いかけた俺の言葉は近藤の声に遮られた。  「凪沙、行くぞ」  凪沙は「じゃあ」と、手をあげて近藤と二人で帰って行った。  結局俺はあの時のキスの言い訳さえさせてもらえないままだ。そして、だんだんと凪沙との距離は離れていくようだ。  体育館を出ると笠間が待っていた。  「答え聞かせて」  ああ、今日は散々な日だ。笠間は今にも泣きそうな顔してる。自分の気持ちとオーバーラップして胸が苦しくなる。  けれど、俺は凪沙以外は誰でも同じなんだ。  「笠間、ただ寝るだけの相手探してるんじゃないなら俺は止めとけよ」  凪沙とはどうにもならない事は分かっている。だけれど、部活のマネージャーは適当に遊んで後腐れなくって相手じゃないだろう。  「笠間、ごめん」  その場を離れたその時に携帯が鳴った。電話?滅多にならない電話が鳴った。  「あ、荻原?俺、近藤。凪沙ってかわいいよなあ、俺食っちゃってもいい?」  「近藤、お前今どこだ?」  「駅前のカラオケボックス」  やっぱり今日は最悪だ。

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