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第17話
「イトさん!」
祖母の名前を呼びながら慌てて駆け寄る、イトさんは腹を押さえて苦しんでる。
血の気が一気に引く。今俺の家族は他には誰もいない。離婚して出戻ってきた母は俺が物心つく前に亡くなった。俺にとっての家族は祖母一人だ。
俺の大声に隣のおばさんが飛び出してきて救急車を呼んでくれた。
祖母は盲腸だった。 手術はそんなに時間もかからずに終わった。もう大丈夫ですよと 医師に言われ身体中の力が抜けた。
救急車の後を追うようにして駆けつけてくれた凪沙そばについてくれた。
自分があまりに無力で何もできない事が情けなくて、ちっぽけな存在になった気がしていた。そんな俺の気持ちが伝わったのか横に座った凪沙がぎゅっと肩を抱きしめてくれた。
暖かい気持ち流れ込んでくる。
やっぱり俺はこいつがいないと駄目なんだ。誰にも俺の心は埋められない。
あまりにも長い一日だった。まるで何週間も過ぎた気がする。
「凪沙、ありがとう。もう大丈夫だから。おばさんにもお礼言っといて。助かったよ本当に」
「何かあったらすぐに連絡して」
そう言い残すと凪沙は俺の両手を包み込むようにぎゅっと握ると帰って行った。
翌日は病院と家を行ったり来たりで部活へは行けなかった。
笠間から心配するメッセージが届いた。「もう大丈夫、心配しないで」と返信する。
もう一度会ってきちんと話そう。俺の心は何があっても他の人に向く事はないと。
昨日、凪沙の暖かさが流れ込んで来た時に誓った。例え凪沙が誰を選んでも俺は凪沙以外を選ばないと。
怒涛の夏の一日は俺に覚悟をさせてくれた。もう足掻く事も無い。妙にすっきりした気分だ。
「イトさん体調はどう?」
祖母の笑顔にホッとする。1人じゃないってこんなにも暖かい。
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