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第20話

 食事を済ませると支度してくるから待っていてと、凪沙が帰って行った。  「最初にお前見た時、荻野は単なる爽やか王子だと思ってた。顔が好みだったから見てたけど、知れば知るほど手に入れたくなるよ」  饒舌な近藤は苦手だ。何も答えない俺の事など意に介さずそのまま話し続ける。  「なあ、男とやったこと有るの?俺と一番試してみない」  近藤がすっと近づいて来て正面から俺の首に手を回してきた。目の前の近藤の顔はすっかり色を帯びている。  「どっちがいい?俺、お前なら抱かれてやっても良いんだけど?」  近藤の体を押し戻そうと近藤の胸に手をついた。そのタイミングでなぜかドアが開く。凪沙、お前のドアを開けるタイミングはいつも最悪なんだよ。  「えっ?え?あれっ?忘れ物……して、その。ごめんっ」  凪沙?勘違いしたのか。まずい。このまま放っておく訳にはいかない。  「凪沙、違う。待って」  慌てて近藤を振り解き、後ずさりする凪沙の腕を掴んだ。その様子を見て近藤が意地悪く笑う。  「凪沙、お前、何焦ってるの?」  近藤は当たり前のように後ろから俺の首に絡みついて来た。凪沙はもう驚きを超えて震えている。状況は悪くなるばかりのようだ。  「違うから凪沙。近藤、ふざけるのもいい加減にしろ」  身をよじって離れると、にやにやと笑う近藤と泣きそうな顔の凪沙とを交互に見て俺は途方に暮れてしまった。  「は、なして、部活行かなきゃ」  抑揚のない声で凪沙は言うと、俺の部屋を後にした。  「近藤、てめぇ」  「おっと、危ない。珍しい口のきき方するね。そんなところも新鮮。まあ、その気になったらいつでも声かけて」  近藤は笑いながら後でとひらひらと手を振りながら俺一人残して行ってしまった。  今日は部活に行きたくもない。重い足を引き摺りながら玄関へと向かった。

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