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第22話
夕飯の席でいつもより静かな俺を見て、イトさんのことで落ち込んでいると勘違いしたおばさんにやたらと話しかけられることになってしまった。
返事もつい上の空。
頭の中ではさっきのシーンがひたすら再生されている。腕の中の凪沙。可愛いすぎる。凪沙は何も言わなかった。寝ぼけてて抱きしめられた事に気がついてないとか。
……凪沙ならあり得るかもしれない。
おばさんの好意に甘えた形で風呂を借り、凪沙の部屋へと戻った。ドアを開ける前に一度深呼吸をする。カチャリと軽い音がしてドアが開く。
ベッドにTシャツとハーフパンツで腰掛けて本を読んでいた凪沙が顔を上げた。自分が唾液を飲み込む音が聞こえた。入り口に立ったまま動けない。
「俺、やっぱり帰るわ」と、俺が言うのとほぼ同時にドアが勢い良く開いた。
「布団、持ってきたからね」
そこには笑顔のおばさんがいた。
「あ、俺やっぱり帰ります」
「修斗君、何を遠慮してるのよ。後は自分でやってね」
おばさんは布団を床に置くと、さっさと出て行ってしまった。
「帰れなくなっちゃったね」
楽しそうに凪沙が笑った。
「お前は、俺がここに泊まっても良いの?」
「何で?話もしたいしね」
話って、何を?
凪沙は親友だが、俺はそれ以上を期待しているんだ。一瞬の沈黙の後、凪沙が話し出した。
「修斗って今、付き合ってるんだよね?」
「え?俺が凪沙と?」
「え?違う、なんでそうなるの。笠間さんとだよ」
ああ、そうだ。体育館の騒ぎ以来その話をしていない。凪沙は俺の目をしっかりと見つめて続けた。
「近藤君は?近藤君は修斗の何なの?」
凪沙には俺が、笠間も近藤も振り回しているようにみえるのか。振り回されているのは俺なんだが。
「笠間とは付き合ってないよ」
「えっ?別れたの?」
「始まっていないものを終わらせようがないだろう」
苛々が募ってくる。凪沙、もう気づいてるだろう。俺の気持ちに。それとも、俺が都合よく考え過ぎなのか?
凪沙は不思議な顔をしている。
何故気がつかないんだと勝手な思いを押し付け、その思いに苛つき肩を掴んでそのまま凪沙をベットに押し倒してしまった。
目をまん丸くして凪沙は「修斗どうしたの?」と聞いてくる。
「分からない?本当に?俺の気持ちが?」
そう言うと凪沙に覆い被さるようにして口付ける。もう無理だ。全て破壊して失った方が楽になる。
跳ね除けられ罵倒される覚悟だったのに、何故か凪沙の体からは力が抜け、凪沙はゆっくりと目を閉じた。
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