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第23話
「凪沙、嫌なら全力で逃げてくれないと……」
「……どうしたら、い……の?」
嫌ではないと誤解してもいいと言う事なのか。
「凪沙が、逃げないのなら。俺は時分の都合のいいようにとってしまうよ?いいの?」
両肩はベッドに押し付けているが手は自由に動かせるはず。嫌なら俺を押しのけて行けばいい。
「嫌だ、修斗が他の人と一緒にいるのは……なんか…やだ」
それは、もしかしてそう言う事なのだろうか?
「でも、近藤君の言っていたのとも違う気がしている」
近藤、お前はいったい何を凪沙に言ったんだ。
「違うって?」
根気強く聞いてやる。こんなの今までの六年間に比べたら短いもんだ。
「一番近いって思っていた修斗に、彼女が出来て寂しいだけだよって」
ああ、あいつは疫病神だ。
「近藤君は修斗とその……あの、いろいろと……その、えっちなことも出来るって言うけど。僕はそう言うの分かんないし」
近藤……あいつはろくな事を吹き込まない。
「笠間さんとは付き合ってないってことは、もしかして近藤君の事が?」
凪沙、この期に及んでもまだ理解できないのか。
「凪沙が好きだ、凪沙がいい」
「え?僕も修斗は好きだよ」
違う、その好きの意味じゃない。
「凪沙、俺はずっとこうしたいと思って」
ゆっくりと口付ける。凪沙は一瞬びくっとしただけで、俺をはねのける事も顔を背ける事もしなかった。
それを返事と理解して、シャツの下に手を滑り込ませる。想像していたよりずっと凪沙の肌は気持ちがいい。肌の上を滑らかに手がすべる。
女性より張りのある身体の稜線を手で撫でながら少しずつ着ているシャツを捲り上げていく。
目尻を少し赤くしたその表情にせき止めていた感情が溢れ出す。自由に動き回っていたはずの俺の手は凪沙の手にぎゅっと掴まれて突然動けなくなった。
「ごめん。修斗、止めて、お願い……」
焦りすぎだ、まだ凪沙の気持ちをさえ確認していない。
「やっぱさ、今日は帰るわ俺。夜中に無意識に襲いそうだし」
そう冗談っぽく言うと、熱くなった自分の身体の熱を発散させるため静かに凪沙の部屋を出た。
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