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第24話

 結局、自宅に戻っても眠れない。  つい今しがたまで俺をベッドから見上げていた凪沙の姿がちらつく。  お預けをくらった身体の熱をどこにも逃がせず悶々とする。部活は明日休みだし、出かける予定もない。眠れなくても問題はない。  六年も待ったのだから、後少し待ったところで何も変わらない。そう思うが、一旦、加速し始めた気持ちに煽られ落ち着かない。  「はあ……眠れねえ」  声に出して言ってみると、誰もいない家に無性に大きく響いた。  寝るのを諦めて机に向かい、開いた教科書の上に頭を乗せていたら、いつの間にか眠ってしまったようだった。  起きるとすっかり明るくなっていた。変な姿勢で寝たせいで首は痛いし、頭も重い。  食べるものもないからコンビニで弁当買って戻る。することもなくごろごろとして過ごしていた。  洗濯したり、部屋の掃除したり、するべきことを済ませているといつの間にか夕方になっていた。  飯食うのも面倒だなと冷蔵庫をしゃがんで覗いていると、上から視線を感じた。  いつもは見下ろしている顔が冷蔵庫のドア越しににこにことしている。俺の寝不足の原因が微笑んでる。  「何してるの、修斗?」  それはこっちのセリフ。  「飯作ろうかと、何の用?」  「夜泊まりに来るね」  返事に困る、何も言えず黙ってしまう。  「お母さんが、ご飯だから来なさいって。夕飯ぐらいは家で食べてだって」  そう言い残して出て行った。  夕飯の時も凪沙はいつもと同じように他愛もない事を話している。さっきのは何だったんだ。自分の家へと戻り風呂に入ろうと廊下に出ると玄関のドアがガチャガチャという。  「修斗?開けて」  外から凪沙の声がする。本当に泊まりに来たのか。何のために?ドアを開けると同時に凪沙が飛び込んできた。  「何で鍵かけんの?今日、来るって言ったじゃない」と、むくれている。  さっさと俺の部屋に上がっていく凪沙の後ろ姿を見て、何が起こっているのかわからなくなった。  凪沙の後を追うように自分の部屋に入る。凪沙は俺のベッドにぼふっと飛びこんだ。  「修斗の匂いがする」  凪沙が呟いた、それを聞いて小さい俺の理性という器は砕け散った。  「凪沙、誘ってる?どう言うつもりでここに来たの?」  「昨日、なんだか眠れなくて。ずっと修斗の事考えてたから、また今日も眠れないのは嫌……だな…と」  最期の方はつぶやくように言うと目を閉じで、すっと眠ってしまった。え?このまま、またお預け?  そうだった凪沙が誘って来るはずがない。

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