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第27話

 駅から家まで並んで歩く。できれば手をつなぎたいがさすがにそれはできないよなと、隣にいる凪沙の顔を見ながら考えた。  「凪沙、今日さイトさん旅行なんだけど。泊まってけよ」  そう言うと凪沙は嬉しそうに「もちろん」と答える。多分、一晩中ゲームやるとか言い出しかねない。というより、そのつもりだろう。  そう言えば、お前ら小学生のカップルみたいだなと近藤に言われた。まあ、仕方ない。まだカップルなのかも定かではないのだが。  ちょっと待ってて、すぐに行くからと凪沙は自宅へ入っていった。先に家に入るとキッチンにメモとお金があった。  『ケーキは冷蔵庫に入っているから、お夕飯はピザでも取ってね』  いつも俺のことが最優先なんだなと、改めて考えた。イトさんありがとうと心の中で感謝する。ごめんなさい今日は不純な動機で旅行に行ってもらいました。冷蔵庫を開けると大きいケーキが自己主張していた。  二人で食えるサイズじゃない。食べ過ぎた焼き肉が戻ってきそうになる。それでもありがたい。  冷蔵庫の扉を閉めて、人の気配に振り返るとそこには凪沙が立っていた。  「修斗、お誕生日おめでとう」  俺の手に小さい袋をよこした。中にはアルミ製の青い携帯ケース。  「修斗って、綺麗な青のイメージがあるから」  冷たいか色か、そうかもしれない。  「凪沙、今日は寒いよね、少し暖めてくれる?」   抱きしめたい衝動に駆られて距離を詰める。その瞬間に凪沙に手で俺は静止された。  「焼肉臭いでしょうよ」  「んじゃ、一緒に風呂入ろうか?」  当然のごとく速、却下された。だよな、無理か。なかなか無い チャンスだと思ったのだけれどね。  この温度差は仕方ない。俺の気持ちは伝えた、それでもそばに居てくれる。それは拒絶ではないということ。  「凪沙、ケーキ食う?」  「食べたいけどまだお腹いっぱいかな」  Tシャツの上からお腹をさすりながら言う。ちょっと子どもっぽいその仕草が可愛くて仕方ない。  末期だな、凪沙をぐいっと引っ張ると無理やり腕の中に収める。  「ありがとうな」と抱きしめて、首筋に触れるか触れないかのキスをする。くすぐったいよと笑う凪沙。ここまでは大丈夫なのか?もう少しだけなら。  そっとTシャツの裾から手を中に滑り込ませる。肌がサラッとしていて、かすかな暖かさが手に気持ち良い。  「し、修斗?」 小さい声で凪沙は言う。そしてしっかりと俺の手を掴んで止めた。  「分かってるよ、何もしないって。風呂入ってくる」  手をTシャツから引き抜くと立ち上がった。明日の朝まで理性を保てる自信が欠片(かけら)もない。

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