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第101話 ジャージ一本

試験休み中の登校日。 テストの結果が配られる日。 級長と俺は主席と次席をキープして、斗織とリューガくん、中山の3人も順位をそれぞれ20位から30位程も上げたらしい。 中山は総合結果のプリントを渡されるなりガッツポーズで「よし!」と叫んで、リューガくんは嬉々として答案を並べて見せてくれた。 斗織は「ありがとな」って、俺の頭を撫でてくれた。 そして、みんなでお昼を食べよってなって、俺が作るよって言ったら、そのままお泊りの流れに。 うちが狭いこと、客用布団が無いことを伝えれば、「じゃあうち来いよ」って言ってくれたリューガくんのおうちに泊まることになった。 お昼はうちで食べて、夜はリューガくんの家へ。 初めてのお泊り会にドキドキしてる。 待ち合わせはうちの最寄り駅で。 それぞれお泊りセットを取りに戻ってから集まることになってる。 パジャマや着替えを用意していると、スマホが鳴った。 斗織からのLimeだった。 『悪い  家の用事で行けなくなった』 あ…、斗織、いないんだ……。 思わず淋しくなっちゃうけど、……家の用事なら仕方ないよね…。 それから十秒も置かずに、次のメッセージ。 『部屋着は着るなよ  パジャマも着るな  ジャージにしろ。ジャージ1本』 ……なんだろ、これは…? お姉ちゃんがくれた可愛いルームウェア、持ってこうと思ってたのに。 お姉ちゃんは、母さんの経営するアパレル系の会社で、デザイナーをしてる。 俺の8つ上の25歳。高校卒業後アルバイトで入って、専門学校を卒業してそのままデザイナーとして雇用されたそうだ。 時々、俺の為にデザインしたって言っては服をくれる。 その大半がユニセックスの可愛いやつ。 今日持って行こうと思ってたのは、ナッツ色のふわもこ系。 シマリスの耳と尻尾が付いてて可愛いやつなのになぁ。 一応、了解のスタンプと、 『残念。またみんなで遊ぼうね。』 って送り返した。 淋しいって気持ちを伝えたら、斗織はきっと気にしちゃうから。 仕方ないから、シマリスのルームウェアと同色のふわもこニーハイソックス、胸ポッケからパンダが顔出してるプリントパジャマも出して、洗濯して仕舞ってあったジャージを代わりに入れた。 ジャージなんて学校指定のしか持ってないし、去年のだと田舎っぽいし、今のでいいよね。 どうせ新学期まで着ないし。 ぜんぶバッグに詰めてから、父さんに泊まる旨 連絡を入れて、待ち合わせ場所へ向かった。 10分前。ちょっと早く着いちゃったかな?って思ったのに、それからすぐに級長が改札から出てきて、中山、リューガくんの順。 5分前には全員集合してた。 中山は俺を見るなり、「うぉおっ、なんだそれは?!」と頭を抱えた。 髪が変なことになっちゃってるんだろうか、と慌てて手櫛を通すと、級長がフッと優しく笑った。 「柴藤君、白いダッフルコートですか。可愛いですね」 「えっ、そうかな?ありがとう」 そう言う級長だって、キャメルのロングコートが似合って、大人みたいでカッコいい。 革手袋にショートブーツ。とても同い年──高校生には見えない。 そう思ったことを告げると、級長は少し照れたように笑った。 中山は、白のセーターにネイビーのダウンベスト。 スポーツマンって感じで爽やかで似合ってるけど、腕、寒くないのかな? 後から来たリューガくんは、白いフード付きのショートコートに、赤チェックのマフラーを巻いてた。 リューガくんは白と赤が似合って、やっぱり可愛い。 リューガくんは俺の姿を見ると、 「白のフード付きコート!俺とリョーちんお揃いみたいだな!」 おっきくピースした。

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