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第109話 爆弾投下

俺は斗織が来てくれたのが嬉しくて、鍵を持つのも忘れて、オートロックの部屋から飛び出してしまったらしい。 玄関前のチャイムを鳴らすと、級長がとてつもない笑顔で迎え入れてくれた。 「紫藤君は意外と情熱的なんですね」 「っ……そんなこと…ないです……」 恥ずかしくて、赤くなった顔を斗織の肩に擦り寄せると、級長はもっと楽しそうに声を出して笑った。 「……愉快ですか?」 「愉快ですよ」 「あんま遼で遊ぶな」 呆れたような声と共に、ガサガサってビニールの揺れる音。 俺を抱きしめてくれたまま、斗織が級長に持ってきたビニール袋を手渡していた。 「ほら、約束のヤツ。遼に手ェ出してねェだろーな?」 級長は中身を改めると満足そうに頷く。 「確かに。有り難うございます」 「なぁに?」 「イクラです」 覗きこむと、袋を開けて見せてくれた。 高かったんじゃないかな?と見上げると、斗織は何でもない風に笑って、また頭を撫でてくれる。 「ではこちらは紫藤君、お手数ですが冷蔵庫にお願いします」 「あ、うん。斗織、ありがとう」 靴を脱いでから、差し出されたビニール袋を受け取った。 級長は改めて斗織に視線をやると、 「羽崎君、僕は紫藤君に手を出してはいませんよ。しかし、紫藤君本人が中山君と大豆田君を抱き締めようとしていました。無論、僕が止めましたが」 置土産に爆弾を投下していった───らしい。

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