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第111話 悪くねェ
「…っ……ぅっく…」
ポロリと涙がこぼれ落ちて、堪えようとしたのに、逆にしゃくりあげてしまった。
「遼、なに泣いてんだよ、お前は」
斗織は靴を脱いで玄関を上がると、俺の頭をぽんぽんと軽くたたくように撫でた。
「人が怒ってんのに可愛い声出すし、なんか勝手に泣き出すし、……そんなんされたら問い詰めらんねェだろ」
情緒不安定か、って、顔を覗きこんでちゅーしてくれる。
「だっ…、…っれのことっ、もう興味無っ…て…っ」
「お前に誤解させたくなくて、慌てて駆けつけたんだぞ、俺は。それなのに興味無いってどーだよ」
「…って、呆れたっ、じゃん!」
「呆れ……いや、お前が可愛いことすっから、顔がヤベェことになってたんだよ。んなダセェ顔、見せられっか」
「そっ…んなん……見せればいいじゃんっ、ばかぁっ!」
拳で胸をボカリと叩いて、着物の胸に飛びついた。
「鼻水と涙で汚してやるっ」
「おい、どうした?なんでそうなんだよ。お前は…」
呆れたような、でも少し楽しそうな息が耳に掛かる。
「…んっ…」
ヤバい…。体の熱が上がっちゃう……。
「なに?また感じてんのか?」
「感じて悪いか!ばかぁっ!」
「…いや、悪くねェな」
ククッと今度こそ楽しんでいることを隠さずに笑うと、斗織はカプッと俺の耳を甘噛みした。
「ん…やぁん」
身体がゾクリと震える。
「遼、パーテーションじゃ音までは隠せねェぞ」
「っ…わかってるよっ」
わかってるけど、斗織に触れてるとこぜんぶ気持ち良くて声抑えらんないし、自分だってそれわかってて俺にエッチな触り方仕掛けてきてんじゃん!
「もぉーっ!俺これ冷蔵庫入れてくるから、斗織は先座って待ってなよねっ!」
「はいはい」
「はいは1回!」
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