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第112話 地獄耳

スン、と鼻をすすりながら部屋に戻ると、リューガくんがティッシュケースを片手に走り寄ってきた。 「リョーちん、平気か?斗織にイジメられた?」 「うん、イジメられた」 頷くと、1枚抜き取ったティッシュケースが空を切り裂き斗織の頭に直撃する。 「あ…」 「っし!オレ、ナイスコントロール!」 リューガくんは拳をグッと握って自画自賛する。けれど……。 「マ~メ~~…テメェ……」 俺がデコピンかましただけで、アイアンクローでお返ししてくるような相手だ。 普段は甘い俺に対しても倍返しなんだから、リューガくんがそんなことをしちゃったら……… 「ヒィッ…?!」 恐怖に悲鳴をあげてももう遅い。 リューガくんは20cmも大きい斗織にあっという間に捕らえられ、絞め技を……ダメだ、痛そうで可哀想で見ていられないっ…! リューガくん、ごめんね。俺は、俺の為に怒ってくれたリューガくんから、目を逸らします……。 ───にしたって、斗織のやつめ。 絞め技なんて言ったところで、リューガくんのことぎゅーって思いっきり抱き締めて、超密着してんじゃん。浮気者。 「斗織のエッチ」 冷蔵庫を閉めながらボソッと呟く。 皆には届かない小さな声……だと思っていたけど、振り向いた級長にニヤリと笑われてしまった。 「羽崎君。その辺にしておかないと、紫藤君が焼いてしまいますよ」 ………級長の地獄耳…

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