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第113話 お嫁さん
ご飯が炊けたら、すし酢と混ぜて酢飯を作って、手巻き寿司パーティのはじまりー!
お刺身のサクはリューガくんが切ってくれる筈だったんだけど、ボロボロになっていくマグロを見ているうちに、本人が居た堪れなくなったみたい。
「リョーちん!ダメだ、魚が死ぬ!」
涙混じりにバトンタッチされて、包丁を受け取った。
「ごめんね、うち刺身包丁無くて」
「ホントはそういうの使うもんなのか?ならオレがヘタクソなせいじゃない?」
少し気を取り直したリューガくんだったけど、俺の切っているお刺身の断面が真っ直ぐなことに気付くと、
「やっぱしオレの腕じゃーんっ」
膝を抱えて落ち込んでしまった。
「たりめーだろ。遼は毎日飯作ってんだぞ」
呆れた顔でそう言う斗織はさっき、俺のエプロン姿を見るなり「自重しろ」って、頭をこつんと叩いてきた。
それは多分、皆の前であんまり可愛い格好するなってことで…。
俺のこと可愛いって思ってくれたのかな?って考えると、嬉しくて思わず顔がニヤけてしまった。
斗織は、だけど、リューガくんのエプロン姿には「うげっ」て苦い顔をした。
幼馴染で親友、家も近い2人に、浮気の心配が無いことがわかったのは良かったけど……。
斗織はもうちょっと、リューガくんの可愛さを認めたほうがいいと思う。
一方、リューガくんの可愛さを存分に堪能している級長は、頭をよしよししながら、その可愛さにニコニコが止まらない。
「大丈夫ですよ、大豆田君。今からでも頑張れば、良いお嫁さんになれます」
「頑張るって、うちじーちゃんが台所に立つなってさぁ、…って、良い嫁ってなんだよーっ!!」
「落ち込んでいるからてっきり…。違うんですか?」
「ちげーよっ!」
「それは、…残念です」
「……大豆田、ドンマイ」
中山が同情の視線を送る。
級長は本日も通常運行。
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