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第116話 嵐みたいな人
お姉ちゃんは、母さんの経営する会社でデザイナーのお仕事をしてる。
年に数回、大きなコレクションに向けたデザインを一気に仕上げなくてはいけないことがあって、特に締め切り間際は追い詰められて数日間ほぼ徹夜で作業。
いつも締め切り明けは2日ほど泥のように眠って回復を図るそうだ。
だけど今年4月、丁度父さんと俺がこっちに戻ってきた頃、お姉ちゃんが締め切り明けに転がり込んできて俺を抱きしめたまま眠りに落ちて……
驚いたことに、3時間で完全復活を果たした!
以来、これが3回目。
お姉ちゃんは締め切り明け、俺を求めてこの部屋を訪れるようになった。
「遼ちゃん、お友達?お友達できたの?」
「うん。友達と、カレシ」
「カレシ!?…あ、だめ…後で聞く…から…」
お姉ちゃんの身体から、フッと力が抜けた。
「お姉ちゃん、ベッド行く?」
「う…ん……」
寝息が首元に掛かって、ずり落ちそうになった体を支える。
座って仰け反るような体勢になって、慌てて後ろ手をついた。
「遼司、大丈夫?」
父さんが軽々とお姉ちゃんを抱き上げる。
俺も自分より小さいお姉ちゃんぐらいは軽く抱っこできるようになんなきゃなぁ…。
「ありがとう、父さん」
ベッドに寝かせられたお姉ちゃんに掛け布団を被せて、はぁ…と息を吐く。
また、うち来る前にスーパー銭湯に寄ってきたのかな?髪がサラサラしてる。
嵐みたい……。
頭を撫でると、眠ったままのお姉ちゃんが幸せそうにへにゃりと笑った。
「遼ちゃんの匂い……」
寝ながら何言ってるんだろう…、この人は……。
「遼ちゃぁん…」
「はいはい」
「もう、遠く行っちゃ…やだぁ……」
「……はいはい」
……困ったお姉ちゃんだ。
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