117 / 418
第117話 女子か!
【斗織Side】
微睡む遼の体温を感じてると、俺まで眠くなってくる。
頭を抱き寄せて、このまま寝ちまうのもいいかもな…と目を閉じかけた時、騒がしくゲーム中のマメと中山とは違う方向、玄関外に人の気配があることに気付いた。
聖一郎さんが帰ったのかと思えば、大人の女性がどエライ勢いで飛び込んで来た。
「ぶふっ…!」
肩がぶつかって、不本意にも弾き飛ばされそうになる。
後ろから申し訳無さそうに、聖一郎さんが顔を見せた。
遼に抱き着いたまま寝てしまったその人は、沙綾さんと言う名の遼のお姉さんらしい。
別れた時母方に引き取られた為一緒に住んではいないそうだが、どうやらとんでも無いブラコンのようだ。
もはや変態に近い。
その勢いはともかく。
やっぱり遼のお姉さんだな。何処か遼に似ている……と、一丁前にその長い髪を撫でる遼の姿を見ながら、なんとなくそう思った。
遼が俺に甘えてくる時と、行動が少し被る。
「じゃあ僕は仕事に戻るね。遼司、お姉ちゃんのことは置いていって構わないから。皆も気にしないでごゆっくり。
斗織君、遼司をよろしくね」
「はい。責任を持ってお預かりします」
聖一郎さんは仕事の移動中、突然お姉さんに呼び出されて、車でここまで送ってきたらしい。
仕事へと戻っていく姿を見送って、
「リョーちんのとーちゃんカッケーなぁ…」
マメがしみじみと呟いた。
その眼差しは憧れに満ちている。
マメの様子に、遼は恥ずかしそうに、けど誇らしげに笑った。
「俺、父さん大好きだから、そう言ってもらえて嬉しいな。
いつか俺も父さんみたいな出来るオトコになるんだ。俺、父さんの息子だから、きっとなれると思う!」
「おう!リョーちん頑張れよ!あ、でもオレもリョーちんのとーちゃんみてェになりたいっ!」
「じゃあリューガくんも一緒にがんばろ!」
「おう!一緒にがんばろーな、リョーちん!」
2人はどうやら本気で聖一郎さんの様な未来を夢見てるようだ、が………
がんばろ!、って2人で手ェ握りあってるような奴らに、聖一郎さんみてェな未来…は、どうなんだ?
俺は後頭部に「女子か!」と一撃を加えたくて堪らない手をなんとか抑え込んだ。
ともだちにシェアしよう!