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第119話 お土産
【斗織Side】
「それでっ?君は?スポーツ少年?」
「中山悠成です!サッカーやってます!」
「だよね!サッカー部って感じっ」
中山、声がデカくてうるせェ。
「君は?ちっちゃくて可愛い~~っ」
「えっ、いや…ちっちゃい…とか……、大豆田竜臥です…」
「いや~んっ、抱っこしていい?いいよねっ、ぎゅーっ」
…いや、すげェなこの人……。マメが潰れそうだし、顔真っ赤になってっし。
「君は君はっ?遼ちゃんがお世話になってますっ」
「嵯峨野 陸翔 と申します。僕の方こそ、柴藤君にお世話になりっぱなしで。主に羽崎君との絡みの妄想で」
「えっ、陸翔君そっち系の話できる人?お姉ちゃんと朝まで語り合えちゃう系?」
「お姉さんもこっちの方でしたか。ええ、ぜひ機会がありましたら」
「ちなみに、遼ちゃんは受け?」
「当然です」
「ぐっ!」
人差し指で眼鏡のブリッジを上げて表情を作る級長に、煌めく笑顔で親指を立てる沙綾さん。
話の半分も理解できないが、2人は分かり合えたらしい。
「お姉さん、こちらをご覧ください」
級長がスマホ画面を見せると、沙綾さんがキャーッと黄色い声を上げた。
「可愛いっ、竜臥君も受けなのねっ!」
「ええ。貴重な受け要員です」
2人のことは放っておくに越したことはない。
もうそろそろ6時だ。
マメの家に移動する用意をしておこうと、脱いでおいた外套を手繰り寄せた。
「おっ。トオル、もううち行くか?」
気付いたマメが「出る前にトイレ借りるー」と立ち上がる。
「そう言えば今日お泊りなんだってね、遼ちゃん。父さんから聞いたわ」
「うん。お姉ちゃんも、暫くは休んでていいけど、ちゃんと遅くならないうちに帰るんだよ。忘れ物しないようにね。オートロックで、ドア一度閉めたら外から開かなくなっちゃうから」
お前、さっきやったもんな。
俺を迎えに出てきた時の遼を思い出して、思わず口元が緩む。
「りょーかーい。でね、お泊りなら丁度いいわ。お土産があったの」
沙綾さんは玄関の方へ向かうと、放り出されてその後 聖一郎さんの手で部屋の隅に寄せられた大きめのカバンを運んできた。
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