120 / 418

第120話 乙女趣味

【斗織Side】 「じゃーん!」 カバンから色とりどりの布を取り出した沙綾さんに、俺の頭に浮かんだのは、 ───この人か!! の一言だった。 色とりどりの布──正しくは、衣類だ。 もこもこした淡い水色の……これはネズミか? 薄いオレンジ、これは……ネコだ、な。 薄黄色に茶の模様、これはトラ……いや、トラ柄のネコだ。 それがそれぞれパーカーと、やっぱりショートパンツに、長い靴下のセットになってる。 パーカーのフードに動物の顔が付いてりゃあキャラもんの部屋着かとも思うが、これはなんつーか、中身ありき……可愛い奴が着てこその、つーか、あざとい可愛さっつーか………。 てか、犯人この人か!! 「ルームウェア、遼ちゃんに合わせてデザインしたのよ。それからね、パジャマも!」 ハイテンションで、カバンから取り出した別の布を広げだす。 そうだな…、色は悪くないな。 薄い青なら、男として完全アリだろ。 その縁取りがピンクで、チェック柄のポケットから変な生き物が顔出してなけりゃあな! 「この子は氷の妖精さんなの。可愛くない?可愛いでしょーっ!」 「うん、可愛い~」 ───可愛いのかよっ!! あれだな…、遼の乙女趣味みたいのは、この人から植え付けられたものなんだな。

ともだちにシェアしよう!