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第121話 混沌

【斗織Side】 「じゃあ遼ちゃん、これお泊りに持って行ってね」 「え……」 その、可愛いらしいパジャマを渡されると、遼は暫く動きを止めた。 困ったように眉尻を下げて、俺に視線を向ける。 「あの……でも、斗織が、今日はジャージ1本って…」 「ジャージ?可愛い遼ちゃんに、ジャージ1本…?」 遼と似た顔の、責めるような視線が痛い。 「…あんま可愛いカッコさせっと、中山がエロい目で見んで…」 仕方なく正直に答える。 「……はぁっ!?みっ、見ねーよ!!」 完全に動揺を丸出しにした中山が言い返してくるが、それはまるっと無視して。いや、……なんか自分で言ったことでこそばゆくなってきたな……。 「ぶふっ…!…いやだ、鼻血出ちゃう。嫉妬?嫉妬なの?斗織君!」 沙綾さんが掌で鼻と口を押えて興奮気味に詰め寄ってくる。 …なんつーか、マメがトイレ行ってる間で良かったっつーか……。 ガキん頃から知ってる奴に、今の顔は見せらんねー、つか…。 「今度斗織君の趣味教えて。遼ちゃんのパジャマ、斗織君の好みに合わせて作ってあげるから。えへっ」 「もっ…もぉっ、お姉ちゃん!」 「じゃあ、微妙に透けてるエロいやつ」 「斗織もなに言ってんのっ!!」 「透け……ブフッ」 「想像で鼻血とは…、若いですね、中山君」 「だっ、大丈夫、中山!?ティッシュ、ティッシュ!」 「いや~ん、遼ちゃん可愛いからモッテモテ~」 ガチャ、と音がして、マメがトイレから帰ってくる。 見るからにカオスであろうその場に固まるかと思ったが、マメは広げられている沙綾さんのお土産を見つけると、 「わーっ、スゲー、可愛い!リョーちんの!?」 嬉しそうに走りこんで来た。 「スゲーッ、似合う、絶対!リョーちん、かわいー!」 「えー?りぅがくんの方が似合いそう」 「そうねぇ…。竜臥君、このネズミさん着てみて。遼ちゃんはネコちゃん」 「おう!着る着る!」 そして何故か、沙綾さん監修による撮影会が始まった。 カメラ代わりのスマホを構える級長。 ティッシュを鼻に詰めた中山。 ───カオスだ。 The chaos だ。

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