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第127話 反抗期
「とにかく、お姉ちゃん!」
ビシッと指を突きつけると、お姉ちゃんは「遼ちゃん反抗期っ!?」と矢鱈と焦った表情を浮かべた。
反抗期、とかじゃないんだけどなぁ。
でも俺、今までお姉ちゃんに、こういう風に意見した事なかったかも。
「斗織は暴力的でもないし、俺付き合ってる内はお姉ちゃんに言われても別れるつもりないから。それ以上イジワル言ったら、嫌いになるからね!」
「えっ!? だっ、だめっ! 嫌いになるとかムリっ! 遼ちゃん~~っ、もう斗織君のこと悪く言わないから、ねっ?」
「ほんとに?」
「ほんと!ほんとに! むしろ応援するからぁっ」
手に縋り付いて必死に訴えてくるお姉ちゃんに、元々そんな怒ってなかった俺は、思わず堪えきれずに笑ってしまった。
直後、リューガくんも俺につられたみたいに、プッて小さく吹き出す。
「さーやさん、リョーちんのことめっちゃ好き過ぎっ」
「好きよ!だって、たった一人の可愛い弟……もーっ、超可愛い遼ちゃんっ!」
お姉ちゃんがテンションマックスで抱き付いてくる。
衝撃に耐えきれずに背中から倒れかけた俺を、斗織が受け止めてくれた。
そのまま首を上げてお礼を言おうとして、───尖った視線に貫かれた。
「遼、お前いい加減っ……、いや丁度良いか」
何かに怒りを感じたらしい斗織が、だけどお姉ちゃんの目がキッて釣り上がったことを見逃さず、言いたい事を口に出すのを諦めたのか、重く息を吐きだした。
「こんだけの人数と身内も居りゃ、証人として十分だろ」
「証人…って?」
斗織はその質問には答えずに、俺の顔をじっと見つめてきた。
睨まれてるわけじゃないんだけど、その強い視線にちょっとタジタジしてしまう。
男前の眼力、恐い。
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