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第130話 欲しくない言葉

俺の未来が欲しい、なんて。 なんでそんな風に、斗織はいつも…… 堪え切れそうにない嗚咽を 強い息継ぎなんだって誤魔化して、しがみつく腕に力をこめた。 どうして俺の欲しくない言葉を勝手に言うの? 俺が喜ぶとでも思ってんの? そんなの……困る。 俺の存在が足枷になる。 どうせ傍に居ない俺のことなんて、そのうち邪魔になるくせに。 忘れて勝手に他の人と幸せになって、 俺だけが忘れられない。 ずっと、憶えてる。 未練がましく、もう何年も友達を作れなかったように、 もう、恋人なんて、一生作れない─── 「お前は、余計なこと考え過ぎなんだよ」 「……余計じゃない」 俺の心を見透かすみたいにそんなことを言うから、せめてもの反発。身をよじって腕の中から抜け出そうと藻掻く。 斗織が、放さないって、もっと強く抱き締めてくれることを切望しながら。 斗織の喉が、小さく低く震えた。 「ははっ、…ばーっか」 髪をくしゃくしゃって、かき混ぜられた。 「ヤベ、遼の髪マジフワフワできもちいー」 「もぉっ、斗織は触んな!すぐ俺の髪ぐしゃぐしゃにするんだからっ」 「なに?俺には触んなって、他の奴には触らせるってことかよ? テメーのが浮気モンだな」 「っ!うわっ、なに!?」 いきなり抱き上げられて、見上げればコツンとおでこ同士をぶつけてきた。 「ほら、また泣いてんじゃねェか」 「おでこ痛いからだし…」

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