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第132話 勝手

涙が左右に流れ落ちて、耳の中に水溜まり作っちゃいそうだ。 「あ~あ…もう……」 最後まで、一緒に居たかったのにな…… ほんとはもっと…… 最後までよりもずっと、 最後なんて見えないくらい、ずっと、もっと…… 「テメーが勝手なことばっか言うなら、俺も勝手にするからな」 「………はい」 最終宣告…なのかな。 ここで「はい」って答えたら、捨てられちゃうのかな……。 「テメーはもういい。勝手に3月で俺と別れてメソメソしてろ。俺もお前が居ない間に勝手に外堀埋めてお前の居場所作って、テメーのこと勝手に迎えに行ってやるから」 「………なにそれ…」 「楽でいいだろ? 待ってるだけで手に入んだからさ」 グイッと、首の後ろに入り込んできた手に、引き寄せられた。 ゴロンと転がって、斗織の身体に乗り上げる。 「……斗織…?」 頬を指先で撫で上げて、表情を窺う。 「んだよ?」 くすりと笑って、頬を撫で返してくる。 「俺…、待たないよ? 信じないよ?」 「なら、待たねェで別のオトコでも作ってろよ。ぜってぇ取り戻すし」 「む…、なんでオトコなんだよぉっ。そこは、カノジョって言うとこだろ!」 「へぇ。お前、カノジョで満足出来んの?」 お尻をスルリと撫でて、意地悪く笑う。 「そんなトコっ、斗織以外に触らせないし、触られても気持ちよくないよ!」 「なんだよ、お前、マジで俺のことスゲー好きなんじゃねェか」 「だから、好きだって言ってるだろっ…!」 抱き着いて、斗織の匂いとぬくもりを充分堪能してから、顔を上げる。 笑ってんやんの。自信満々の顔して。 なに?俺、誘導尋問にでも引っ掛けられたの? ぜんぶ斗織の思い通りになっちゃったみたいで、ちょっと悔しくなって唇がムーって尖る。 それを見て、斗織がフッと微笑んだ。 「唇、ムーってなってんぞ」 いつかと同じフレーズを口にして、口元に手を伸ばしてくる。 俺はそれを手で躱して、びっくりしてヒクリと動いたその目に笑いかけると、顔を近付けて─── 「っ、遼!待てだ、待てっ!」 掌で顔を押さえつけられた…!

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