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第139話 想い出
カッコ良くて優しい恋人がいて、一緒に居て楽しいって思える友達がいて。
一緒に手巻き寿司パーティー、お風呂に皆で入って、お泊り会。
俺、今すごく幸せじゃない?
こういうのをリア充って言うんだろうなってくらい、楽しい時間を過ごしてる。
ホントのリア充は男女混合でもっと乱れてるイメージだけど、俺にはこれが一番楽しいから、これが俺のリア充。
俺が3月で居なくなるって分かってるのに、じゃあもう一緒にいても意味が無い、なんて誰一人言ってこない。
3月までの仲だね、とも、誰も言わない。
一緒に遊んで、一緒におんなじことして、そうしている時間は想い出になる。
大切な、かけがえのない想い出になる。
しーくんと居た時だって、いつも楽しくて嬉しかった。
時々ケンカもしたけど、大好きな幼馴染だった。
だけど俺は、返事が来なくなった───それだけのことで、その想い出すら悲しいものとして、心の奥底に封印しちゃってたんだ。
右側の布団で寝てる斗織の髪に手を伸ばす。
左から、俺、斗織、級長、リューガくん、中山の順。
もう皆、眠ってるかな?
俺は友達とのお泊り会が久し振りなせいか、興奮しちゃってなかなか寝付けないでいる。
ほんと、小学生ぶり。
斗織の布団にこっそり潜り込む。
斗織の匂い嗅いで、斗織のぬくもりを感じてたら、安心してすぐに眠れそうだし。
そんな風に思っていたんだけど……
「眠れねェのか?」
腕を引っ張って腕枕を作ろうとしていたら、逆に身体を引き寄せられていた。
「斗織も眠ってなかったの?」
皆はもう眠っているだろうから、起こさないようヒソヒソ声で返す。
「お前がゴソゴソして起こしたんだろーが」
小さく笑って、優しい声で咎められた。
「う…、ごめん。…ごめんのちゅーっ」
ぎゅってひっついて、ほっぺにちゅー。
「反省してねーだろ?」
喉の奥でクツクツ笑われて、口を尖らせる。
「してるよー。じゃあ口にする。とぉる、起こしてごめんね」
今度は斗織の上に乗り上げて、仕方ねェなって笑う唇に、ちゅって音をさせて押し当てた。
途端、頭の後ろを押さえ付けられて、唇同士がぴったり合わさったまま離れなくなる。
「んっ……」
ビックリして瞼を開くと、障子の薄紙から射し込む月光にうっすら照らされた斗織の顔が、艶っぽくニヤリと笑った。
ズクン───と下半身が熱を帯びた。
だって、だって俺、斗織のことかっこ良いって思ってんのにさ、大好きでめちゃくちゃ惚れてんのにさ、そんな目で見つめられちゃったら……
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