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第144話 中山の憂鬱4

【中山Side】 目の前で嵯峨野が、大豆田の身体をくるりと回した。 自分の方に向けて何をしようとしているんだと眺めていれば、ずるりと大豆田のズボンを下ろし、こっちにお尻が丸出しになる。 何気に可愛い尻と知る。……って何見てんだ、俺は。 寒ぃんだからちゃんと布団掛けてやれ、布団! なんだか目が離せずに嵯峨野の様子を見てると、ジュブジュブって控えめな音が聞こえてきた。 こっちの布団の中の音だ。 向こうの布団は、もっとえげつない。 「あっ…、とーりゅ、きもちぃ……ぁん、も、イキそ…」 「だから言ったろ。お前はエロいんだから、素マタでも充分イケんだよ」 あっちは、素マタだそうです。 こっちは、多分兜合わせ。 で、俺はまたシングルプレイになるわけな! なに?DKが泊まりで遊ぼうってのは、こういう遊びをしようって意味なの? 俺ら集まってAV観てたわけでもなんでもねえじゃん。 なのに、それでもこういう結果に落ち着いちゃうわけ? なにそれ、男子高生ケダモノ過ぎて怖え。 ………いや、サッカー部の集まりじゃこうはなんなかったし! まあ、柴藤みたいな可愛いのや大豆田みたいにちっこいのはいないし、居たらもしかしたら………いやいや、なんねーし! つかさ、柴藤と羽崎はともかく、嵯峨野と大豆田ってどうなってんだ?? 付き合ってんのか…? 嵯峨野の片想い、とか? そう言や嵯峨野、よく大豆田に絡んでっし、好きでもない男にこんなんできねーよなぁ。 少なくとも俺は、柴藤には出来るけど大豆田には出来ないし。 つか、大豆田、っていちいち言うの面倒な苗字だよな。 だからか。付き合い長い羽崎が「マメ」って呼んでんのは。 柴藤は「りぅがくん」って、……可愛い。舌っ足らずとか。天使か! 「とぉゅ~、てぃっしゅぅ」 舌っ足らずで甘えたな声に、ハッとする。 「あー…、ちょっと待ってろ。急に動くと垂れる」 いつの間にか2人の営みは終結していたらしい。 余計なこと考えてて、2回目すっかりイキそびれてた。 その余計なことのお蔭で、俺の下半身はすっかり落ち着いていて、ゆるく眠気もやってくる。 「んぁっ、くすぐったい~っ」 「ほら、動くな。布団汚れっだろ」 「んん~っ」 終わってなお色っぽくて可愛いとか、天使改め小悪魔だな、小悪魔柴藤。 「あっ、とおる、ごみ箱じゃだめぇ。トイレに流して来て」 「やだよ、寒ィ。別にここでいーだろが」 「だって、中身捨てる時に見られたら困る…」 「困んのはマメだから別に………分かった。朝起きたら捨ててきてやる」 羽崎、メロメロじゃん。 やだよとか言いながら、結局甘やかすわけな。 「取り敢えず浴衣着直すから、先寝てろ」 「やーっ」 「や、じゃねェよ。じゃあ待ってろ」 「んー……はい。帯結んだ」 「結べてねェよ、ヘタクソ」 「もう眠いから抱っこで寝よ?ね、ちゅっ」 「……わかった。布団から飛び出すなよ」 「うん。朝までぎゅってしててね」 「ああ、おやすみ」 「おやすみ」 ……ちくしょー…、羽崎の野郎、良い身分だな、くそーっ。 大体お前は女入れ食いのモテ男なんだから、男の柴藤ぐらい俺に譲ってくれてもいいだろーが! 胸の内で散々悪態をついていると、不意に頭にツンツンと何かが当てられていることに気付いた。 目を開けて振り返ると、ティッシュの箱がもそもそと動いている。 「羽崎君から回ってきました」 コソッと伝えてくる嵯峨野の声。 ………気付いてたのかよ!! 気付いていての、あのクオリティーでやり切った感じ!? 気付いてたなら、途中で止めろよ!! かくして、俺たちの枕元には丸めた5人分の使用済みティッシュが朝まで転がっていたのだった。

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