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第146話 バックレ禁止
自分の家は目の前なのに、送っていくと言ってくれた斗織は、マンションのエントランスで不意に足を止めた。
「じゃあな。部屋まで気を付けて帰れよ」
「え?斗織、寄ってかないの?」
ビックリして見上げると、軽く笑みを零す。
「ああ。今日は帰る」
「父さん、仕事でいないよ?」
「ん。また今度な」
手を離し、踵を返した斗織のあとを追うと、何か思い出したように小さく「あっ」と声を上げ、歩みを止めてくれた。
「そう言えば遼、お前24日空けとけよ」
「えっ、斗織、クリスマス一緒に過ごしてくれるの?」
クリスマスって言えば、恋人同士でイチャイチャする日だよね!
一気にテンションが上がって見上げた俺に、斗織は何故か眉を顰めて見せる。
「違ェよ」
「えーっ」
ひどい。俺の気持ち弄ぶ!
口を尖らせると、また唇をムニムニって摘ままれた。
「クリスマスよりもっと大事なことがあんだろーが。誕生日くれェ自己申告しとけ」
おっかない顔して、頭をこつん、って……
………でも……
「え、あ…の……」
斗織、俺の誕生日、知ってたの…?
俺、自分から言ってないよね?
誕生日まで、一緒にいられるの───?
「バックレ禁止な。その日はずっと一緒に居てェから、聖一郎さんには悪ィけど、俺だけの為に1日、空けとけ」
「っ……はい!」
おっきく返事して、ぎゅって抱き付いた。
「コラ、遼。俺帰るっつの」
「やだ~っ!ちょっとだけでいいから、一緒にいよ?」
「監視カメラに映るぞ」
「いいもん、そんなの。ちゅーしてくれてもいいよ?」
「アホか」
そんなことを言いながらも、抱き返してくれる斗織が大好きです。
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