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第148話 会いたい

スマホを手にして、パズルアプリをやって。 ……でも満たされなくて、Limeを開く。 斗織とのメッセページ、昨日の朝は俺の「おはよう」から始まって、斗織の「用意終わってんのか?遅れんなよ」返して俺の「もう終わるよ。またいつもの時間に駅でね」で終わってる。 それから時間を置いて、学校から帰ってからの、「用事で行けなくなった」のやり取り。 今日は朝から───昨日からずっと一緒だったから、当然メッセージは一つも来てないし、俺も送ってない。 楽しかった……くらいは、送っておこうかな。 そう思ったのに、打ち込んだ言葉は、 『会いたいよ』 さっき別れたばっかりなのに、そんな乙女なセリフを打って、有ろうことかついつい送信してしまう。 本音では、ね……帰っちゃって淋しいって、わかって欲しいから。 恋人なんだし、少しくらい甘えちゃってもいいよね? だけど、重いって思われるのは嫌だなぁ……。 『ごめん。  俺、ウザかったよね。』 すぐに続けて送ると、そこで2つ一辺に既読がついた。 『馬鹿  ウザいとか言うな  俺までウザくなんだろーが』 即、斗織からトークが送られてくる。 う…と、これって……… 『それって、斗織も一緒にいたいって思ってくれてるってこと?』 『まあな』 『俺たち、相思相愛だね!  嬉しい(≧▽≦)』 『ばーか』 悪態をつかれてる筈なのに、なんだかすごく愛を感じるって言うか。 “好き”以外の二文字で愛を伝えることができる高校生、侮れん!! 『今時間平気なの?』 『ちょっとだけな』 ぶふっ、カ〇ちゃんの「チョットだけよ~」みたい。 『アンタも好きねぇ?』 『カトち〇んじゃねーよ  今待ち時間』 ふふっ、すぐに分かってくれた。 昨日の夜、級長が持ってきてくれたDVD、皆で観たもんね。 でも、ちょっとした待ち時間……じゃあ、電話は無理かな。 『あのね、斗織。』 ホントは声が聴きたいけど、暇じゃないのにこうして相手してくれるだけで有り難いから、我慢。 だから、ありがとうって想いを込めて、俺の気持ちを伝えよう。 『好き』 『おう』 返された言葉は途轍もなく簡潔で、だけどスマホを見ているその顔は、照れて少し赤くなってるんじゃないかな?なんて。 『すごく好き。  ずっと好き。』 重ねて伝えて、それから少し長く、言葉を打っていく。 その間に斗織から返信あるかな?って思ったけど、スマホは全く震えない。 『俺、きっと大きくなるよ。  父さんみたいに、斗織よりおっきくなって、男前になる。  それでも斗織は俺のこと』 『好きでいてくれますか?』 二度に分けて送った言葉は、すぐに既読がついて、スマホを開きっ放しでちゃんと読んでいてくれてるんだなって分かった。 だけど、なかなか返事が来なくて……… ───ああ、こんなこと訊くんじゃなかった。 後悔が胸に湧き上がる。 俺、やっぱり重いよね。 斗織、当たり前に自分のことを“抱く方”だって思ってたし… 俺、斗織よりおっきくなったら……きっと、今よりもっと可愛くなくなっちゃうよね。 なんで考えさせるようなこと───俺と付き合ったのを後悔させるようなことを、訊いちゃったんだろう。

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