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第149話 “が”じゃなくて“も”
ピポパンって音がして、スマホがブルッと震えた。
斗織からの返信、……ちょっと怖い。
だけど、画面は開きっ放しで。
俺は往生際悪く薄目にして、そ~っと斗織のメッセージを確認する。
『俺は今のお前の顔も可愛いと思うし
俺よりちっこいとこも、細っこくて軽いとこも気に入ってる
けど、そんだけじゃねーだろ
お前はどう成長しようが、お前だろーが』
「ふわっ…、えっ……、とおるぅ~~っ」
斗織の言葉が、乱暴なんだけど優しくて、思わずスマホを抱きしめてその名を叫んだ。
目視出来たらきっと、今 俺の頭の上には無数のハートがフワフワしてる筈。
どう成長しようがって、俺がおっきくなっても好きってこと?
斗織より背が高くなっても、ガタイ良くなって重くなっても、俺の全部、中身も身体も全部、愛してくれるってこと?
床に転がって悶えてると、胸に当たるスマホがまたピポパンって音を立てた。
慌てて、スリープに切り替わってた画面を開く。
『それから、安心しろ
お前は俺よりデカくはなんねーから
伸びようとしても頭押さえて縮めてやる』
なっ……!!
頭押さえて縮めるってなんだよ!!
『ヒドいっ!
ばかっ!!』
急いで打ち返して怒りを伝える。
そして、仕返しとばかりにペロッて舌出してるスタンプと一緒に、新たにメッセージを送る。
『でも、ありがとう。
俺も、斗織がビールっ腹の中年オヤジになっても、禿げ散らかしたおじいちゃんになっても、大好きだからね!』
『安心しろ
俺は太んねーし、禿げもしねーから』
んなっ…!なんだその自信は!?
『なんで分かるんだよーっ!』
『俺にそのつもりがないからだ』
『禿げたくて禿げる人なんていないと思う……。』
『お前も、別に乳とか肉とかいらねーから、勝手に太んじゃねーぞ
そのちっさくて細っこいのが気に入ってんだよ』
『俺の、体が好きなの?』
『ばーか
お前の体“も”だ』
ふふっ、なんだこのやり取りは。
くすぐったいなぁ、もう。
だけど、肝心な言葉は一回も言ってもらえてない。
俺は指を高速で動かして、
『俺の体も、なに?』
斗織からその言葉を聞き出そうと、首を傾げる白うさぎのスタンプを送った。
中々返事は来ないけど、既読はついてるから……
もしかしたら、待ち時間が終わっちゃったのかな?
このまんま流されちゃっても……しょうがないよね。隙間の時間を俺にくれた、それだけで嬉しい、し……。
はぁ──と複雑な感情を溜息に乗せて吐きだす。
その時、待っていたスマホがピポパンと音を出した。
慌てて画面に目をやる。
『お前の今も未来も全部俺に寄越せっていっただろーが
つか、そしたら体も中身も俺のもんだろ』
う、う~んと……、そういう事じゃなくって。
『だから、遼の内臓もなにもかも』
「な、内臓…?」
『これから用事でスマホ取れなくなるから
返事しなくていいから』
「えっ、急に!?」
いや、確かに待ち時間に相手してくれたのには感謝するけど、内臓で止められても……
内臓もなにもかも───俺の内臓どうしたいの!?
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