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第168話 恋人同士の写真

【斗織Side】 洗面室で手洗いうがいを済ませる。 手を拭いて振り返れば、ニコニコと嬉しそうに俺を待つ遼の姿があった。 その手には白いふわふわのバスタオルを抱えている。 「斗織、部屋行こ。……あっ、でもシャワー浴びてからの方がいい? あ、そう言えば斗織に何があったかまだ聞いてない! あ、でも、それは後でも…うー、でも早く聞きたいし…とーるぅ……」 突然落ち着きなくなったその様子に、思わず笑みが溢れる。 ヤバい……、可愛い、コイツ。つか、可愛すぎっだろ。 「シャワーはどうせ後で入んだろ」 「え、…あ、うん。でも…」 「それよりバスタオル、落とすなよ」 もじもじしながら頷くその背中と膝の後ろに手を差し込んで、横向きに抱き上げた。 遼は慌てたようにバスタオルを抱きしめて、怖くなかったかと確認した先で、へにゃんと頬の筋肉を緩める。 だから!可愛すぎだっての! 期待してんのか、それとも抱き上げられて顔が近いからか、頬が赤く染まる遼をベッドに下ろす。 と、不意にカサリと紙の音がした。 気になったのは俺だけではなく、遼は視線を動かすと音の正体を見つけ、それを手に取る。 「これ、さっきの……」 牧原(あのガキ)が落とした封筒だ。 拾ってきたのをさっき放り投げておいたんだが……、なんでベッドに置いたんだ、俺は。ダイニングテーブルとかに置いときゃ、今気になることもなかったってのに。 「中、見てもいいかな?」 遼のヤる気が、すっかりオフになってんじゃねーか。 いんじゃねェの、と答えると、遼は興味津々な様子で封筒から数枚の写真を取り出した。 「……あっ、これ欲しいっ」 小さく声を漏らすから覗き込む。 ……つか、…そっかー。そうだよな。 俺の恋人を確定する調査なんだから、こういう現場を押さえんのが仕事だよな……。 これ、今日の昼間か? 昼過ぎ、遼を送ってきた時、別れ際 抱き締めちまった時の写真じゃねェか……。 人のイチャついてっトコ勝手に撮ってんじゃねェよ……… 「んじゃ、俺はこれ貰うわ」 遼の手元から抜き取ったのは、手を繋いで歩いてる写真。 これも昼間のだ。 場所は、うちのすぐ外だな。うちっつーか、マメんトコ出てすぐか。 ユルユルの顔で俺を見上げて何か話してる遼。 第三者の立ち位置から見ても可愛いんだな、コイツ。 「あ、じゃあ俺はこっちがいい」 さっきのエントランスでの写真はキープした上で、遼は更に一枚の写真を指差す。 それは、俺がゆるく握った手の甲側で遼の額を小突いてる場面で。 ……俺、遼と居る時こんな表情してんのか?! 顔に熱が集まる。 何だコレ、俺、有り得ねェ!!

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