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第182話 男と付き合うと言う事
マジも何も……
俺、結構教室でも斗織とイチャついちゃってると思うんだけどな。斗織が構ってくれるから、つい甘えちゃってると言うか。
でもさ、斗織を見てれば態度と表情で俺のこと大切にしてくれてるって丸分かりだし、俺だって斗織に対して全身全霊で好き好きって伝えてるつもり。……だったんだけどなぁ。
まだ半信半疑の人もいたんだ、ってことに軽くショックを受けた。
だから俺は普通に「付き合ってる」って言葉で済ませることはしないで、否定されないような、相手に逃げ場を作らせない言葉を探す。
どうせ斗織の女避けに付き合ってるフリしてんだろ、なんて思われたら腹立たしいし。
「3人はさ、本気じゃない男と、遊びで付き合えたりする?」
「ん〜? 遊び…なぁ……」
「あ! 俺、女装した紫藤だったらデートすんのありかも~。周りのヤツらに見せびらかしたらちょー優越だし、ついムダに外 連れ歩いちゃうよね!」
「それなら俺も、紫藤、高原、おマメ、女装してれば全員アリ」
「見せびらかすって、お前らなぁ…」
呆れたように3人を見る中山は、流石俺たちの友達。分かってくれてる。
「そうじゃなくて。…男同士ってね、結構大変なんだよ。
まず、周囲から奇異な目で見られるでしょう? 男女なら当たり前のことでも、マトモじゃないって眉顰められたり、自分と関係ない人からも、ただ好き合ってるってだけで、嫌な目で見られたり悪く言われたり。
直近では、斗織を好きだって中学生の女の子から、子供産めないくせにって罵られました」
「!……んなこと言われたのか!? リョーちん!」
可愛い婦警さんが身を乗り出すと、サンタ帽の級長がすかさずお腹に腕を回して落ちないように支える。なんか萌える。……じゃなくて!
おかしい、俺、絶対感覚おかしくなってる!
「うん。……でもね、斗織の気持ちが信じられたから、俺も相手にちゃんと言い返せた」
だから平気だよ、と答えると、リューガくんは「ムリすんなよ。笑うなよ〜っ」って、自分の方が泣きそうな顔をして、労るように頭を撫でてくれる。
「えへへ。そうやって理解して、まるごと好きでいてくれる友達がいるからね、俺、大丈夫なんだよ」
級長も、「2人ならば大丈夫です」って、力強く微笑んでくれる。
ふと、隣から泣き声が聞こえて振り返れば、中山の膝の上で可愛いメイドさんが、目をぎゅっと瞑って涙をポロポロ零していた。
「ひろたん? お化粧崩れちゃうよ」
テーブルからナプキンを取って顔にあててあげると、ウルウルの目で、「りょーくぅん」って、手を包み込まれた。
「ん?」
見つめ返せば震える声で、
「ぼく、おうえん、するからぁっ」
って。
「ありがとう」
えへへ。なんだかもらい泣きしちゃいそう。
紙ナプキンで涙を押さえるひろたんは、本当の女の子みたいに……ううん本当の女の子以上に可愛くて、
───師匠、これが女装男子萌えですか!? と振り返れば、
「中山君、早く高原君を抱きしめて頭をヨシヨシしてあげて下さいっ!」
スマホカメラを構えた級長の姿が目に映った。
師匠………
そしてこれが、リアル腐男子なんですね……。
俺、全然腐男子化してなかった。
まだ入口に足踏み入れた程度の超初心者だったよ。
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