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第183話 追加の参加者
俺達の本気を分かってくれたのか、3人はその後、俺にこっちに来て膝に座れとは言わなくなった。
だからと言って、男と付き合う気持ち悪い男って扱いもせずに、俺がフォークでつついたサラダも普通に食べるし、田中くんなんて俺がナース姿なせいか、ほっぺに付いたマヨネーズを拭いてあげたら普通に照れて赤くなってて可笑しかった。
リューガくんの言うとおり、良いヤツらなのかなって思った。
「じゃあ~お待ちかねのケーキ、いっちゃいますか~!」
山田くんのチャラヴォイスに、わあっと歓声が上がった。
……て言っても、目に見えて喜んだのはリューガくんとひろたんと俺の、不本意だけど女装組、のみだったけれど。
「ケーキ、ケーキ」
ひろたんはすっかり中山に気を許したようで、膝の上でメインの登場に嬉しそうに手を叩いてる。
「よーし、腹の空き具合は充分だ。持ってこーい」
リューガくんに急かされて、山田くんが苦笑しながら冷蔵庫へ向かう。
その背中をまだかまだかと見送りながら、リューガくんがふと、あっ、と声を上げた。
スマホを手にして、Limeメッセでも来たのかな?
何か打ち込んでるみたい。
級長に声を掛けて画面を見せると、2人顔を見合わせて笑った。
リューガくんが女の子の姿で居るせいか、仲の良い恋人同士にしか見えない。
ラブラブですか! ラブラブですね!
だけど、何故か2人は俺に視線を合わせると悪戯っぽく笑って、
「リョーちん、入口のドア開けてきて」
「追加の参加者が来たようです」
「そうなの? うん、開けてくるね」
目の前をごめんねって2人の前を通してもらって、途中「どしたの? トイレなら女性用に入ってね~」ってフザける山田くんに、追加の参加者だと伝えて通りすぎる。
ドアには鍵がかかっていたから、カシャリと開けて、ちょっと重たいドアも引き開けて。
誰が来たんだろうって顔を向ければ、
「なんつーカッコしてんだよ、遼」
「わっ…わわっ、斗織!?」
真逆そこに居るとは思わなかった恋人の登場に、俺はびっくりしてドアから手が離れ、
だけど斗織は扉を楽々と押し戻すと、
「まさかナースの遼に迎えられるとはな。……スゲー可愛いけど」
ちょっと照れたみたいに前髪をクシャって掻き上げて、それから俺の頭も撫でてくれた。
その笑顔に、胸がきゅうんと音を立てる。
ドアが自然に閉まった後、俺は震える手で鍵を掛ける。
「斗織、……袴、かっこいい……」
予想だにしなかった袴姿の和装に、胸はキュンキュン、ドキドキしちゃって、体が熱くなる。
お教室の後、時間も惜しんで駆けつけてくれたのかな。俺の為に……?
そうなら、すっごく嬉しい!
ぎゅってしたい!
けど、ここには他の人達もいるし。
俺、今こんな格好だし、このまま迫ったりなんてしたら、やっぱり女の子の方が可愛いんじゃないか? って気付かれちゃうかもしれない。
俺のこと好きなのは変わらなくても、女の子として生まれて来ればよかったのに、とか、これからは普段から女装でいることを求められちゃったりしたら、嫌だもん。
だから俺は抱きつきたい衝動を必死に抑えて、ちゅーなんて以ての外です! って自分に言い聞かせて、斗織の手を普通に繋いで「行こ」と中へと導いた。
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