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第186話 ステイ

フーッと息を吐き出して、ちょっとだけホワンとする頭をプルプル。 喉、乾いたな。 「…じゅぅす……」 「ん? ジュースか? ほら」 佐藤くんが、空の紙コップにカルピスウォーターを注いでくれた。 「ありぁとー」 ヘラって笑ってお礼を言うと、佐藤くんはジャラジャラ音で消えそうな声音で「いや…」と少しだけ顔を赤くした。 「ん……」 なんでか飲むのがちょっとヘタクソで、口の端からカルピスが零れ落ちる。 コップをテーブルに置くと、俺は零れたカルピスを拭いて欲しくて、まだ皆と話をしてる斗織の膝の上で回転して向かい合わせに座り直した。 「ん? どうした?」 俺に視線を合わせて、髪を撫でてくれる。 けど、…それ違う。俺の髪じゃないもん。 「飲んれたら、こぉれちゃったの」 「あ? なんかお前変じゃねェ?」 「拭いてぇ」 「拭く? ……て、これか」 紙ナプキンで口元をそっと拭き取ってくれた。 「これでいいか?」 「うんっ。ありぁと。すき~」 綺麗になった口で、斗織の唇にちゅー。 すぐに離れて、もっかいちゅー。 くっついてるとどんどん気持ち良くなってくる。 もっとちゅー。って、斗織にちゅっちゅっ甘えていたら、 「遼、ステイ! ……お前なぁ、人前でなんつーことしてんだよ…」 グイッと腰を押し離された。 「擦り付けてくんな、勃つだろーが」 耳元で小さな声で訴えられる。 「ぁん、耳…きもちぃ…」 「コラ。…太股丸出しだしよ…」 「ねむい~」 「自由だな、オイ」 なにか言われてる気がする。斗織に呆れられてるような気もするけど…… 温かい胸に顔を埋めてるとすごく眠たくなって、力が抜けてズルズルと身体が落ちていく。 「遼、起こしてやるから寝てていいぞ」 「う…ん……」 斗織は俺の身体を力強く抱き上げると、肩に顔を乗せさせてくれた。 安定した体勢に、安心感が増して。 俺はトン、トン、と背中をたたく心地良いリズムを感じながら、斗織の匂いに包まれたまま淡い眠りに落ちていったのだった。

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