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第187話 中山の憂鬱 Part.2
【中山Side】
突然羽崎に甘えだした紫藤が、エロい空気を残したまま眠りに落ちた。
どういう事だこれは!?
寝姿がめっさかわいい!
胸に顔を埋められてる羽崎が憎いぞ俺は!!
暫く寝落ちた紫藤の背中をトントンと叩いていた羽崎だったが、顔を上げるとまるで仔猫を見守る母猫の如く穏やかだった眼差しを殺し屋のそれへと変えて、目の前の山田へと照準を定めた。
「テメェら、遼に酒盛りやがったな」
酒? 急に甘えたになった紫藤は、酔っておかしくなってたってことなのか…?
「いやっ、羽崎、違う違う! 酒なんて此処には無いってっ!」
「ならなんでコイツ酒臭ェんだよ?」
「ケーキ、かなぁ? ちょい洋酒強めのチョコケーキだからなぁ? なあ?」
引きつった顔の山田は、助けを求めるように佐藤と田中に目をやる。
………ん?
そう言えば、ずっとおとなしくモグモグしてるけど、高原は酒強いのか?
気のせいか、膝の上の体温が上がってるような気がするんだが……
「高原?」
呼び掛けると、「う?」と、トロンとした目で見返された。
顔も赤くなってる。
───遅かったか。
「大丈夫か? 気付いてやれなくてごめんなぁ」
頭を撫でると、コテッと首を傾げて、不思議そうに見つめられる。
……ヤバい………。
女装が似合って可愛い所為か、相手は惚れてる紫藤じゃないってのに、……ドキドキしてきた。
「なかやまくぅん」
男にしては高い愛らしい声が甘さを纏って聞こえるのは、高原がケーキで酔っ払ってる所為だ。
俺に甘えてるからじゃない。
……うん、そうそう。相手が俺だから可愛くなってる訳じゃない! 誰に対してだって酔ったら可愛くなっちゃうんだよな、高原は! 俺相手だからってことじゃないんだ!
だから勘違いすんじゃねーぞ俺えぇぇぇっ!!
自分にそう言い聞かせてないと、この可愛さに陥落しちまいそうだ。
そもそも見た目も性格もメチャクチャ可愛いんだぞ、高原は。
そんなヤツ膝に乗せて、潤んだ半開きのでっかい瞳で見つめられてみろ。
………ヤバい。心臓がバクバク…いや、ドコドコしてきた………。
これで、高原が紫藤みたいに擦り寄ってキスなんかしてきてみろ………
100%、勃つぞコレ!
羽崎の理性、途轍も無いな!
とんでもなく可愛い 好きな相手から、甘えられて擦り寄られて、「ステイ」つって止めたぞアイツ……!!
俺だったら間違いなく、人前だってのも忘れてがっつく。
理性と本能の割合、理性多めに見積って、1:9がいいトコ。理性なんて本能の前にてんで無力。瞬殺だ。
だから、高原。君は俺を潤目で誘惑してないでいいから、前向いて大人しくケーキを食べてなさい。
出来ればそのチョコのやつじゃなくて、白い、恐らく酒が効いてない方のやつを。
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