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第189話 さようなら、そしておまたせ
【中山Side】
「ど…どうした、高原?」
このままじゃ理性が崩壊する。
取り敢えず、これ以上顔が近付く前に、高原の要求を聞いてやんないとな、と理性フル活動で訊ねた。
と言うのに、当の高原と言えば、
「なかやまくぅん」
甘えるように俺の名前を呼んで。
ふと目を逸らして紫藤を視界に捉えたと思えば、また俺に視線を合わせて。
首に回した腕にぎゅーっと力を込めて、俺の胸に顔を埋めた。
何が起きたこれは───っ?!
俺はもう、高原の口が汚れていたことなんかすっかり忘れて、ただ自分の爆発しそうな心臓の音が聞こえてしまってるであろうことだけが気になって、慌てて高原の身体を抱き起こし向かい合わせに座らせる。
途端、高原は俺を見上げる顔を歪めて、その黒目がちな瞳から涙をポロリと一雫溢れさせた。
「えっ!?…と、高原?」
「ぼくも、したい……」
大丈夫かと涙を拭えば、また胸に抱きつかれた。
さっきと違うのは、胸に顔を埋めるでなく濡れた瞳でじーっと見つめ上げてきたってことで……。
「えっと、……何を?」
さっきから鼓動がドコドコ煩い。
ヤバい……、これ、心臓が皮膚突き破って胸から飛び出てくんじゃねーのか!? マンガみてーに!
いや、そんなことある筈無いのは分かってるけど、冗談でも言ってないとマジで心臓が持たない‼
「ぼくも、きすしたい」
~~~~ゴフッ!!!
「いっ、いやっ、そう言うの軽々しくしちゃダメだってっ」
「だめ……?」
溢れて零れ落ちる涙が薄明りの照明を反射してキラキラと輝いていて、…あぁ、ヤバい、勃ってきた。
つかマジヤバくねーか俺、惚れてる奴が真横にいんのに、他の男の涙に反応してるとか。
「だからな、そう言うのは酔った勢いじゃなしに、ちゃんと好きなヤツとしなきゃ…」
「すき……だもん。なかやまくん、……すき」
メイドの白いブラウスの胸からも鼓動は激しく響いてきて、俺のドコドコと相まって訳分かんねーくらい胸を乱打される。
「んっ……」
重ねられた唇は、思った以上に柔らかくて、温かくて………
────プツーン
さようなら理性!
おまたせ、本能!!
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