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第190話 中山、オチる
【中山Side】
「んッ…んんぅっ……ふ、ぅっ…んーっ」
頭を押さえつけると柔らかい唇を押し開けて、甘くて熱い、ちょっと洋酒くさい口内を舌でかき混ぜなぞり倒す。
気持ちいい……。マジか、超気持ちいい…!
高原は積極的に唇を奪ったくせに、その後はずっとやられっぱなしだ。
空気を求めて逃げようとした舌を吸ってやれば苦しそうに眉根を寄せて、俺の服に掴まる手にきゅっと力を込めた。
「…っ…は…ふ、ぅん………なか、やまくぅ…っ」
口の端から涎を零しながら名前を呼ぶ姿に、ズキューンと心臓を撃ち抜かれる。
……あ、ダメだ。オチた。
俺、高原好きだわ。
女装してるから女に見えてとか、多分関係ない。
可愛いってんなら高原は、中学の頃からそこらの女子より全然可愛かった。
可愛い女子は可愛いだけあって、自分に自信があってそれなりに気が強くてプライドも高い。
だけど高原は可愛い容姿の自分に自信がないらしく、自己主張できない、俯きがちなヤツだ。
まあ、男だしな。可愛いって言われるより格好良くみられたいってのが普通だろう。
中学の頃は同じサッカー部。
俺は1年からレギュラーで、高原はベンチにも入れない2軍以下だったけど、練習だけじゃなく準備も片付けも、3年になってからも後輩より誰よりも頑張ってて、そんな高原のことを俺は秘かに尊敬していたんだった。
高校もサッカーやんのかな? って思ってたんだけど、いざ入部してみると高原の姿は無く、だからって俺も「一緒にサッカーやろうぜ」なんて誘うこともせずに、1年の時は俺はF組、高原は確かA組。
縁遠くなって廊下ですれ違っても話すこともなく、2年になって同じクラスになったけど此処まで仲良くなるキッカケは、自分からも作ろうとはせずに。
それが、久々に話したと思ったら、女装で膝の上、更には熱烈な告白とキスなんだもんよ。
これが、酔っててエロい気分になって好きじゃないのについしちゃった、なんて言われた日にゃ俺 相当凹むぞ。
こんな純粋そうな奴にそんなん言われてみろ、メンタルの強くない俺、もう恋なんてしないって言い出すぞ。
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