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第193話 おはようございます

「…ょう、遼、そろそろ起きろ」 ……ん? なんだろ…? 斗織の声だぁ…… 「ぅー…?」 「遼、もう帰るぞ」 「えっ……」 はっきりしない思考の中、帰るという言葉が聞こえて、慌てて目を開けた。 「斗織っ、帰っちゃうの!?」 「フッ、…ばーっか」 目覚めたら斗織の腕の中で、身を離して見上げれば、可笑しそうに笑われた。 バカってヒドい…。 あっ、でも斗織、着物着てる!! ………格好良いから、特別に許す。 「おはようございます」 ぎゅっと抱きつけば、抱き返して頭を撫でてくれた。けど…… ん? なんか、いつもと感触が違う。 感触っていうか、触られてる感が。 「………んー?」 「んーじゃなくて、帰るから着替えて来いよ。化粧も落とさなきゃ帰れないんだろう? 別に遼の服なら、どっちでも構わねェだろーけど」 化粧…………あっ、あーーっ!! お、思い出した! クリスマスパーティに来て、女装させられてたんだった! 途中で斗織が来て、ケーキを、………俺、ケーキ食べたっけ…? 食べたような、食べてないような…。 「俺のケーキはぁ?」 「それなら、柴藤のショートケーキ残ってるから、それだけ食って帰れば?」 後ろから声がして、振り返るとププッと笑われた。 「ここ、寝跡ついてっよ」 自分のほっぺたツンツンってして、田中くんがニヒッと笑う。 「う……」 恥ずかしい。 俺、なんで寝ちゃったんだろう。 「せっかく遊んでたのに、寝ちゃってごめんね」 皆に向けて謝ると、田中くん山田くん佐藤くんの3人が、気まずそうに笑って目を逸らした。 「いや、こっちこそごめんねー。マ~ジで……」 良く分かんないけど、ごめんね、ならこっちを見て言ってもらえないだろうか。 「リョーちん、先ケーキ食べてから着替える?」 リューガくんがどっちが先でもいーぜ、って訊いてくれる。 「うん。今着替えに行ってもボタンとか外せなさそう」 まだ眠くて、と答えると、「じゃ、オレもう一杯コーラ飲むし~」と田中くんに向けて紙コップを差し出した。 「はいはい。カワイコちゃんの願いとあれば~」 今日の新発見。女装してると普段より男子が優しい。 斗織や級長、中山は、普段から優しいけどね。 「ぅ……? っわあっ!!」 その中山の方から、突然叫び声が響いて皆一斉にそちらに目を向けた。 「ああ、やっと起きた。おはよう、高原」 「なっ、なっ、なっ…!」

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