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第194話 高原君の動揺
寝起き一発目、中山の顔を見せられて動揺する高原くん。…ううん、ひろたんって呼ぶ約束したんだった。
ひろたんは何故だかワナワナしてる。
中山、そんなビックリするほど顔面崩壊してないと思うんだけどなぁ……。
と見ていれば、真っ赤な顔をしたひろたんは中山を突き飛ばして、逆に自分の方が転がり落ちそうになってる。
「っ…ぶなっ!」
中山はひろたんの身体を慌てて抱き寄せると、その顔を覗き込んでフッと微笑んだ。
「こら、危ないだろ、高原」
「ふぁ…っ?!」
中山は優しい表情をしているのに、何故かひろたんは怯えて頭を抱え込む。
その様に目尻を下げて、頭をいいこいいこってしてる中山の姿に、
「あれ……?」
ちょっとした違和感?を覚えた。
なんだろう、中山のやつ…。
なんだか、俺を撫でてくれてる時の斗織の表情に似てないか?
まあ、俺の斗織の方が数千倍イイ男だけど。
「ねえねえ中山、もしかして、2人って付き合ってたりする?」
耳に口を寄せてコソッと訊いていると、背後から腰を乱暴に引き寄せられて中山から引き離された。
……お腹痛い……。
「うー…なにぃ? もーっ」
「いいから、さっさとケーキ食っちまえ」
「……はぁい」
乱暴行為には納得いかないけど返事して、山田くんが渡してくれたケーキにお礼を言って手を付けた。
「なんでぇ…?」
動揺してるひろたんのつぶやきが聞こえてくる。
どうしたんだろう?
やっぱり中山が気持ち悪い?
「ひろたん、もしかして中山が嫌?」
「どした、ひろたーん? 中山きっしょいか?」
ひでぇ! って叫ぶ中山は放っといて、リューガくんと2人、ひろたんの様子を伺う。
ひろたんは「ううんっ!」って必死に首を横に振る。
「遠慮することねェぞ。気持ち悪ィならそう言ってやれ」
「そんな…っ。中山くんは気持ち悪くないよっ!」
斗織は相変わらず、中山相手には容赦無い。
中山は、自分が散々気持ち悪いって言われてる状況にカラ笑い、ちょっと死んだ魚の目になっちゃってる。
「両想いになれた現実に、まだ頭がついていっていないだけですよ。ね、高原君」
級長の眼鏡の奥の優しい瞳が笑いかけると、
「え………」
ひろたんは、固まったまま動かなくなった。
「えっ、て……」
その背後で中山も、ピキーンと固まる。
えっ…、てか、えーーーっ!!?
中山とひろたん、両想いだったの!?
俺、全然気付かなかった。
でも、ひろたん可愛いし優しいし癒やし系だしいい子だし、好きになっちゃうのは仕方ないよね!
だけど……う~ん? 中山には勿体無い?
中山、いつから好きだったんだろう? 俺たちとツルんでないで、ひろたん誘って遊んでればよかったのにー。
それか、俺たちと遊ぶ時に一緒に遊ぼうって誘えば、警戒もされなかっただろうしさ。
自分はぐいぐい俺たちの中に入り込んできた癖に、そんなトコで遠慮して、変なやーつ。
「つか、高原寝起きだし、あの時酔ってたし、いまいち把握できてねえんじゃねーの?」
佐藤くんの言葉に、皆が「ああ」と納得する。
寝起き、は分かるけど、酔ってたってなんだ?
ひろたん、お酒飲んだのかな? でも、そんな不良なことするような子じゃないよね。
この場でお酒なんて飲もうとしたら、級長が絶対止めてくれるはずだし。
て言うか、俺が寝てる間に何か美味しいラブイベントが行われていた模様?
…とと、美味しいってなんだ、美味しいって。
俺は腐男子じゃないし。
最近級長に毒されてるぞ……。
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