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第197話 一世一代の告白
中山、頑張れよ! って、初めてかもしれない応援を心の中で中山に送る。
そう言えば俺達、サッカーやってる中山のこと応援したことない……!!
「高原…、聞いてくれるか?」
中山がソファーから立ち上がって、まだカーテンの方にいるひろたんの元へと歩を進めた。
入れ替わりにリューガくんが級長の膝に戻る。
多分ね、もう女装してないし、3人も女の子と同じ目では見ないと思うんだ。
だから、普通に田中くんと山田くんの間に座ろうが、佐藤くんの隣に座ろうが、変なことはされないハズ。……なんだけど。
リューガくんもすっかり、級長の膝に座るのが当たり前になっちゃってるんだろうな。
お腹にまわる腕に掴まってる様が可愛くて、つい笑っちゃう。
でも、だめだめ。
中山、一世一代の告白だもん。真面目に聞いててあげなくちゃ。
田中くんたちも茶化したりしないで、静かに事の成り行きを見守ってる。
顔はちょっとニヨニヨしちゃってるけど。
「さっきのこと、高原は覚えていないかもしれないけど、俺は、…好きって言われて、嬉しかった」
お、おぉ…! なんか、ラブワゴンでの告白シーンを見てるみたいだ。
「高原はさ、自分が男だって気にしてるけど、それ、大丈夫だと思う。多分俺、バイだから」
「ふぇっ…??」
えっ!? そっ…それは、衝撃の事実だ!!
ひろたんも、目ぇ丸くしてビックリしてる。
「驚くことは有りません。皆隠しているだけで、世の中には結構ゲイやバイセクシャルが多いことも事実。案外、この先目覚める人も、この中にいるかも知れませんよ」
すかさずフォローを入れる級長。
流石、我らがお兄ちゃん。
「ねぇ、羽崎君?」
「俺は違ェよ。遼以外の男は無理。女も無理」
……なんか、惚気けられました。
「そういう訳だから、性別とか気にしないで聞いて欲しいんだけど」
「う…、うん……」
俯くひろたんの視界に入るよう、中山が腰を落とす。
「中学ん時、一緒のサッカー部だったの、覚えてる?」
「えっ…、僕がサッカー部だったの、覚えててくれたの?」
足元を見つめていた視線が、少しだけ上がった。
「当然だろ。高原は部内で一番、レギュラーの俺たちより、誰よりも頑張ってた。俺、こいつスゲーッて、マジで尊敬してたんだからな。
で、高校同じで、また一緒にサッカー出来るって思ってたのに、いつまで経っても入部して来ねーし」
「だ…って、僕サッカー下手くそだし、マネージャーとしてなら役に立つかなって、一応部活見学には行ったんだけど、……女の人、いっぱいいたから………」
「確かに、女子マネの存在には助けられてるけどさ、知識は断然高原のが上。ついでに言っとくと、……可愛さも上だからな。うちのマネージャー達より」
「う………」
さっきまで蒼白だった顔が、今は真っ赤に染まってる。
プルプル震える手は、変わらず拳を握っているけれど。
「俺は、高原が好きだよ。だから、俺と付き合ってください! ついでに専属マネになって、タオルとかドリンクとか渡しに来てください!」
「えっ、むりっ!!」
「ムリ!?」
「だって、いきなり僕が行ったら女の人たちに怒られちゃう!」
「そんなこと、ないと思うけど……」
いや、中山。
女の子って、案外恐い。
「じゃあ、試合に応援来てくれるだけでも!」
「う~~、……1人で?」
まだ渋るひろたんに、中山は考える素振りを見せ、
「なら、サッカーの事はいいから、俺とお付き合いだけでもしてやってください!」
ひろたんの手をギュッと両手で握った。
その手を瞳に映したひろたんは、戸惑うように中山を見上げて、もう一度視線を下げると、小さく頷いた。
「………う、ん……。それだけ…なら……」
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