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第199話 至れり尽くせり
皆と別れて、デパ地下へ向かう。
今日は、斗織が夕飯買ってくれるんだって。
今日と明日は飯作らなくていいからな。飲みもんも俺が入れてやるからって、そう言ってくれた。
至れり尽くせり。
恋人が、全部自分に任せろって言ってくれてる。
こんな誕生日、初めてだ。
人通りの多いところだし、男同士だと目立っちゃうかな? って。
手を繋ぎたいって言おうか言うまいか迷ってたら、「はぐれるぞ」ってさり気なく、手を引いて歩いてくれた。
斗織は持ってきてた洋服に着替えたから、もう袴姿じゃない。
着物姿はめちゃくちゃ格好良いけど、やっぱり……洋服姿もいいなぁ。
見上げてムフフってしちゃう。
ロングコートの似合う長身男子ってカッコイイよね。
黒が似合って大人っぽいし。
革靴履き慣れてるとか、もう大人の男って感じ。
同じ高校生に見えないもん。
つないだ手をもじもじって動かして、恋人繋ぎにチェーンジ。
「どうした?」
髪をクシャって撫でられる。
「えへへ、なんでもな~いっ」
ずっと見てたの、バレてないよね……。
少し焦って、顔を逸らす。
別に見てても怒られないだろうけど、見惚れてました、なんてやっぱり恥ずかしいじゃん。
そうして視線を向けた先に───
「あっ…、斗織だ」
「あ? 俺?」
「あっ、ううん、違う。斗織のぬいぐるみ」
「は?」
「あの子っ」
斗織の手を引っ張って、その子の飾ってある店のショーウインドウへ駆け寄った。
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