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第200話 斗織のぬいぐるみ
「かわいい…」
真っ黒で、ふわふわの、目付きの悪いうさぎのぬいぐるみ。
「うさぎって感じじゃねェだろ、俺は」
「でもこの子、黒くて目付きが悪いもん」
「どういうイメージだ、そりゃあ」
笑いながら頭をくしゃって撫でられた。
お座りしてるポーズのその子は、連れていってとでも言うように、俺に向かって両手を必死に伸ばしてる。
黒いつやつやの瞳が俺を見つめて、一緒に帰ろうって。
大きさは、50cmくらいかな?
触ったら気持ちよさそう……。
だっこして寝るのに丁度いい大きさだよね。
………よし、連れて帰ろう!
「欲しいのか?」
斗織うさぎを連れ帰る決心をしたその瞬間、斗織に訊ねられた。
「うん。俺…」
買いに行ってくる。と、その言葉を遮るように。
「なら、俺がプレゼントする」
「えっ…?」
「クリスマスプレゼント、用意してなかったからな。ちょっと待ってろ」
俺が答える前に、斗織はサッと身を翻しお店へと入っていってしまった。
俺と離れたから大股で、颯爽と歩く姿もカッコイイ、とか……。
こっちを見つめてる斗織うさぎを手に取ると、俺に視線を寄越してフッと微笑う。
あーー、もうっ! どれだけ好きにさせれば気が済むんだよ!!
赤くなったほっぺを両手で包み隠した。
こんなトコで赤くなってニヤニヤしてたら、ちょっと変な人みたいに思われちゃうじゃん、…もう。
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