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第201話 口の悪いお姫様
片方だけ手を放して顔を扇いでいると、ふと前に人が立ち止まる気配がした。
目を上げる。
知らない男の人…だけど……
「こんなところでどうしたの?待ち合わせ?」
ちょっとだけ上にある目に見下された。
なんか…チャラそうな人だな。
山田くんを大学生にして顔をグシャッてして、品も捨てさせちゃった感じ。
でもこの人、俺が真冬なのに顔扇いでたから、具合が悪いんじゃないかって心配してくれたのかも。
なのにそんな言い方、良くないよね。
そう思って、一応の愛想笑いで応える。
「あの、お構いなく。連れがいますので」
「ツレって女の子?なら、オレッちも男友達と来てるからさぁ、一緒に遊ばない?てか君、もしかしてノーメイク?にしちゃあ、ちょーキレーだよねー」
オレッち、って………
いやいや、問題は“オレッち”じゃない。
俺………もしかして、女の子だと勘違いされてないか…!?
これってもしかして、さっきまで山田くん達に女装させられてた所為じゃないのか!?
も~~っ!こんな所に女装の弊害が!!!
「女の子じゃないです。彼氏を待ってます」
「ええ?じゃあ、カレシさんとオレと、どっちがカッコイイ?」
「彼氏です!」
なん…だこの失礼な男は…!
俺男だし、彼氏と来てるって言ってんじゃん!
大体どの面下げて、斗織とお前如きを比べさせようとしてんだよ、おこがましいわ!
俺より目線は上だけど、肩位置変わんないし、股の位置なんて俺よりも5cm以上低いじゃん!
斗織は脚も長けりゃ顔は見上げるほど高いし、だからって顔サイズおっきい訳じゃないし、なんてったって男前! 滅茶苦茶かっこいいんだからな!
対してこの人は、ずっとヘラヘラしてるし、ジャケットは汚れてんのか元々そういう色なのか、なんだか汚い錆茶色だしさ。
「じゃあ、ツレに女の子もいるしさあ、一緒に…」
「一緒に?テメェ、俺のを何処に連れてくつもりだ?」
不意に、背後からグイッと強い力で抱き寄せられた。
「斗織!」
へへっ、俺の王子様が助けに来てくれた。
「へ、へぇ…、ああ、うん、カレシ カッコイイねー…」
ナンパの人の声が引き攣ってる。
かっこいいって、当たり前だろ。俺の斗織だもん。
「遼、待たせて悪かったな」
「ううんっ。来てくれてありがとう、王子様」
「はっ、なんだそりゃあ」
照れを隠すためか、小さく笑うと髪をクシャって掻きあげる。
堪らず下ろされてる方の腕にぎゅっと抱き着いた。
あーっ、もう、だめだよね、こんな街中で。
でも、好きがどんどん膨らんで溢れ出して止まらない。
斗織がカッコよすぎるのがいけないんだ!
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