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第206話 ブクブクお風呂
頭と身体を洗い終えて、用意しておいた入浴剤をバスタブに入れる。
「あのね、あのね、斗織っ」
「ん?どうした?」
優しい眼差しの斗織に、バスタブの縁に付いたボタンを指差してみせる。
「このボタンを押してください」
うちのお風呂はジャグジー付き。
いつも仕事で疲れてる父さんが、物件探しの際に一番気に入って即決した理由がココ、身長183cmある父さんでも広々使えるバスタブと、付属のジャグジーだ。
斗織もジャグジーの存在は知ってる筈なのに、「これか?」なんて言いながらボタンを押してくれる。
でもね、俺が用意したのは、そんなびっくりじゃないんだ。
ブクブクブクボコボコって、お風呂に張られたお湯が空気の泡を拭き上げる。
そして、それと連動して、
ブクブクブク………
「泡風呂か?」
「うん!ジャグジーだとね、いっぱい泡が立つんだよ」
浴室に甘いバラの香りが漂う。
泡がいい感じに立った頃、ジャグジーを止めてセットの小袋の中の真っ赤なバラの花びらをばら撒けば、OLさん垂涎のロマンティックバスの出来上がり。
「気持ち良さそうだな」
つか、女子力高ェし、と笑いながら斗織が湯船に足を浸ける。
「ね、俺も初めてなんだ。楽しみ」
女子力云々は、触れずに流しておこう。
「次は俺がローション風呂の入浴剤、用意してやるよ」
「あ、それも気持ちよさそう!」
「風呂ん中まんまローションなら、中で挿れてやれそうだしな」
「う……、ソウデスネ…」
そんなことを言いながら、バスタブの中からおいでおいでしないで欲しい。
言ってることはオヤジ臭いのに、顔はカッコイイとか、ズルいから!
濡れた前髪をバックに掻き上げた斗織は、何時もよりも大人っぽくて、泡から出てる鎖骨とか、俺よりずっと広くて逞しい肩とか、見るのが恥ずかしくなっちゃうぐらい色っぽい、…って言うか……。
「…おじゃまします」
なるべく前を見せないように、お尻を向けて斗織の脚の間に足をつける。
泡で見えないから、探り探り。
「寄りかかっていいからな」
「はい…」
見えない分、恥ずかしさは半減だけど、肌が触れればやっぱりドキドキしちゃうわけで。
えと、この辺かな…?
ゆっくりと腰を下ろせば、
「んぅっ…」
思いがけず、お尻の入り口に斗織のが当たっちゃって、思わず声を漏らしちゃう。
お風呂に一緒に入ってるだけなのに、感じたりしたらダメダメ。
……もうちょっと…前。
ずりずりと前に進んで落ち着こうとすれば、腰を掴まれてぐっと引き寄せられた。
「んっ……やぁっ」
「ヤじゃねェよ。ちゃんと支えててやんねェと、お前泡で滑ってスッ転ぶだろが」
力いっぱい否定出来ないけど、……恥ずかしいなぁ。
当たってることも、転びそうって思われてることも。
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