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第211話 貪欲
「だからあの時、お前スッゲェがっついてきたのか」
斗織が腑に落ちた、と言いたげに頷いた。
「がっついてなんてないじゃん」
人聞きの悪い。
いつもと一緒でいらっしゃいのハグして、いつもよりちょっと熱烈なちゅーしちゃっただけじゃん。
それに───
「せっかく教えてもらったんだから、シたくなっちゃうのはしょーがないだろっ」
お腹をポスッて殴ると、苦笑された。
「お前、どんだけ性に対して貪欲なんだよ」
「違うー!斗織と一緒に、気持ちよくなりたいだけだもん」
「はいはい」
「もーっ!じゃあいい。もうしないもんっ。今晩はこれでお終いです」
思い切りイーッてして、斗織のお腹をさっきより強く押し離す。
後ろが疼くとか、結局出させてもらってないとか、不満はあるけど……、我慢できない程じゃない。
どうせ明日も一緒だし。
明日が本番、俺の誕生日なんだし、明日すれば良くない?
そうだ。そうしよう。
一度そう決めてしまえば、さっきまでの甘い時間は無かったかのように、俺に溜まってた熱はしゅるしゅるしゅる、と逃げていく。
「じゃあ、上がってご飯食べよ?」
シャワーヘッドを手にして、泡を流しお風呂から出ようとすれば、
「ちょい待て、遼」
腕を掴んで止められた。
「なに勝手に治まってんだ、お前は」
斗織の視線の先は、俺の下半身。
「えー……、そっちこそ何見ちゃってんの?えっち」
そう責めながら俺も確認してみる、と……
この人まだギンギンだし。
準備万端、挿れたくて堪らないってディティールしちゃってる。
「んー……。部屋に戻って、シますか?」
ピン、と指先で弾くと、身体ごとビクリと震える。
まー、可愛らしい反応。
「つか、知ってんなら教えろ。此処でスる」
「しないよ」
「…んで終わってんだテメェは」
「だって斗織、しないって言った上に俺のことバカにしたぁ。だから俺は、貪欲じゃない、慎ましやかなトコを見せなきゃなんです」
「あのなあ……」
呆れたみたいに溜め息ひとつ。
……でも、呆れてるの俺の方だからね。
人のこと、がっついてるエロい奴って扱いしといて、自分のが全然エロっちぃじゃんか。
「今日は、出来るだけ優しくしようと決めてきたんだ」
まだアワアワの残る体に抱き込まれた。
「別に……斗織はいつも優しいしっ」
意味分かんないし!とムクれると、「なに拗ねてんだよ」って、矢鱈優しい顔をして頭をよしよししてくる。
「こないだ、激しくヤり過ぎて、お前夜まで一人で歩けなかっただろーが。明日は出掛けてェんだろ?」
「こないだのはっ、特殊パターンだったじゃん…。何回もしたのがダメだったのー。フツーに1……、2…3回…?とか、すればいいだけの話だろ、この絶倫がっ」
「それは、褒められてんのか?」
「……褒めてねーよ、ばーっか」
なんで絶倫が、イコール褒めてるってことになっちゃうんだよ。
だから、男は下半身で生きてるなんて言われちゃうんだろーが。
お前らみたいな奴の所為だからな、そんなんじゃない俺達みたいな男もいんのに。
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