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第215話 甘やかす恋人
さんざん好き勝手したくせに、お風呂から出ると斗織は途端過保護になって、のぼせてないか? なんて俺の体調を労ってくれた。
斗織の「意地でも」って宣言通り俺は一遍トばされて、気付いた時には綺麗な身体で湯船に浸かっていた。
勿論、斗織の腕の中に抱き込まれて。
お風呂から出た後は、頭と体を拭いて服まで着せてくれた。(パンツだけは素早く自分で穿いた。)
冷蔵庫にしまってあったご飯と、お茶も斗織が用意してくれて、夕飯を済ませた。
嬉しくて楽しくて、俺ははしゃぎっ放しだ。
食後の片付けまで買って出てくれた斗織の背中を、ダイニングテーブルに頬杖を突きながら見つめる。
「今日着流しは?」
寝着の浴衣に身を包む斗織に訊いてみる。
「荷物になるから置いてきた。着替えの洋服持ってったし、部屋着ならそれで充分だろ」
「えーっ、着物がいいーっ。袴着よう?」
「ありゃお教室用だから汚れたら色々面倒せェんだよ。簡単に洗えねェの」
「そっかぁ」
残念。
てか、汚れるようなコト、もう出来ないっつーの。
お尻痛い……。
「けど、浴衣も格好良いからいっか」
誰ともなしに呟いただけだったのに、「遼、聞こえてる」と指摘されて、ちょっと恥ずかしくなる。
「…んでもね、袴姿久し振りに見たから、……ちょっとキュンとした」
「ああ、あの時以来か。遼が学校でサカって股間撫で回してきた時」
洗い物を終えた斗織が、手を拭いたタオルを戻して歩いてくる。
ありがとう、お疲れ様、と伝えると、頭をクシャクシャって撫でられた。
あたま、きもちい…。
「それはさ、もう忘れるといいよ」
両手を差し出してくるから、俺も手を伸ばす。
「無理。あの時初めて、“コイツ抱ける”から“コイツ抱きたい”になったから」
「えー…、そ、それはそれは……」
あの時気付かずに俺は、昇格試験に合格していたらしいです、師匠。
抱っこされてベッドに運ばれる。
お風呂上りに腰が痛いって零してから、移動はぜんぶ斗織の腕の中。
甘やかされ過ぎです。
幸せ過ぎて、バチが当たりそう。
それから斗織は一人洗面所へ向かったと思えば、俺の歯ブラシを持ってきてくれた。
クッションに座ると、
「ほら、頭乗せろ」
───磨いてくれる気みたいです……
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