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第217話 なんでも嬉しい
予想外の展開にパニックで固まっていると、
プツン、とテレビの音が途絶えた。
「遼、誕生日おめでとう」
「んっ……」
唇に、やさしいキスが落とされた。
それは口内を暴く激しいものではなく、だけど愛しさが触れたところから染み渡るような、深い深いキス。
硬くなってた身体もその温もりに溶かされて、俺は心に導かれるまま愛しい恋人の背中に手を回した。
「ありがとう。うれしい…」
ぎゅっと抱き締めて、俺からもキスを返す。
……もう、いいや。
お尻痛くっても、手錠で拘束プレイでも。
斗織から与えられるものならなんでも、俺、嬉しいよ。
「それ、誕生日プレゼントな」
抱きしめていた腕をスルリと解かれて、手を握られた。
手錠がプレゼント~……?
このヘンタイー、と胸の内で悪態をつきながら手首を見やると───
「わ、…わわっ」
「なんだよ」
頭をくしゃりと撫でられた。
「これ、プレゼント!?」
「そう言ってんだろ」
「もうとおるくん貰ってるのに?」
「コイツはクリスマスプレゼントっつったろ」
「でも、これ高そう…」
「茶道の師範ってのは、お前が考えるより儲かんだよ。つーかさ、嬉しくねェのか?」
少しだけ心配そうな瞳。
慌ててぶんぶんと首を振った。
「嬉しくないわけないっ!うれしい!!」
俺の手首には、手錠───ではなく、
白いレザーベルトに、丸い文字盤。
インデックスには12時から3、6、9時に4つピンクダイヤが埋め込まれている、シルバーの指針が輝く時計。
自分とペアウォッチなんだと、自身の手首に巻いた時計を見せてくれる。
斗織のものは、俺にくれたものと色違いで、黒色の文字盤にホワイトダイヤ、黒いレザーベルトで、ベルトも文字盤もちょっと大きい。
……もぉっ、ほんとにこれ、ペアウォッチの女性物じゃん。
ペアなんて…嬉しいけどっ。
てっきり、お揃い色違いで揃えてくれたのかと思ったんだけど、そうではなかったみたいだ。
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