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第228話 恋人は天使

【斗織Side】 遼を連れてきたのは、ビルの中の室内アイススケート場だ。 券売機で入場券を買って、貸靴も2人分用意してから、目を煌めかせてスケートリンクを見つめている遼のデコをツン、とつついた。 「ほら、その袋貸せ。後で靴とロッカーにしまうから」 「あ…、うん、ありがとう。あっ、俺ロッカー代出すからね。あ、貸靴代!あっ、入場料も!ここは俺が出すから!」 意識がこっちに戻ったかと思えば、一気に色んなことに気付いたようで払う払うと捲し立ててくる。 「遼、今日これから、払うって言う事にデコピン1回すっからな」 「えっ!?」 デッケェ目。 咄嗟にデコを押さえながら、驚いたようにこっちを見る。 「で?ロッカー代、貸靴代、入場料?が、なんだって?」 目の前に構えた指を突き出してやれば、 「っ……お世話になります」 こっちは本気でかますつもりなんか毛程も無いってのに、怯えきった表情で頭をゆるりと下げた。 デコピンの構えを解いてその手で頭を撫でてやると、安心したのか顔を上げてふにゃりと情けない目をして笑う。 「じゃあ、行くか」 「はいっ」 まったく……敵わねェな。 俺が今まで付き合った女達は、まあ世間一般の尺で見れば美人、可愛いと言われる類の奴らばっかだった。 選んで付き合ってた訳じゃない。 そう言う奴らしか寄って来なかったって話だ。 …まあ、俺も大概メンクイだから、付き合う基準がキスできる相手=それなりの見た目……それなり以下なら断ってたかもしんねーけど。 で、そう言うツラの良い、テメェに自信のある女ってのは、俺には媚びてくるけど、周りの男にはチヤホヤされがち。 ってんで、男と出掛けた際の出金を当たり前のこととはしない。 学校帰り、テメェから誘ってファーストフード寄らせたくせに、俺の注文に割り込んできて一緒にメシ代払わせる。 高ェ水族館に行こうと向こうから言ってきたくせに、入場券買う列に並びすらしねーで厚化粧を直してる。 そのうち俺もそれが当たり前の事になってたから、ファーストフード屋で遼に「お前は何にする?」って訊いた時、 「あっ、俺お会計別だから、斗織の分だけ買っちゃって。先に上がって席取ってて貰えたら有り難いな」 そこで、にこっ、とか笑われてみろ。 コイツは天使か!と本気で思った。 はっきり言って、後光が見えた。

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